告白 ベッドに優しく横たえ直された。 頬に手を添え当然のように顔を寄せる雲雀に、慌てて雛香は口を開く。 「ちょっ、待てお前ッ、」 「何」 するり、シャツの第一ボタンをあっさり外され、雛香の口元は引き攣った。 「…あ、明日、決戦だぞ!」 「正しくを言うと今夜だけどね」 「ハ?」 「後で説明したげる、どうせもう眠れないから」 何やら恐ろしいことをサラリと言ってのけ、雲雀は平然と覆い被さる。 ギシリ、ベッドの木枠が軋んだ。 「…っ、そもそもなあ、お前なんにも、」 「好きだよ」 間髪入れずに告げられた言葉に、 今度こそ、頭が真っ白になる。 「……は、」 「だから、好きだ。雛香、君の事が」 鼻先、今にも触れ合いそうな位置にある、黒い瞳を見つめ返す。 言葉の中身を飲み込むまでに、しばらくかかった。 「…な、」 「足りない?」 飄々と言ってのけ、雲雀は悠然と目を細めた。 「好きだよ、雛香ー誰よりも」 「……、」 「ずっと前からね」 「……んで、」 「何…って、君、ちょっと、なんで泣いてるの」 「っ、ないて、なんか、」 「嘘つき」 呆れたようなため息が降ってくる。そのまま、目元を指で拭われた。 嘘なんかじゃない、 そう言いかけた言葉は、嗚咽と混じり合って喉の奥へと引っ込んだ。 どうすればいいのかわからない。 ぐちゃぐちゃだ。我ながらもう訳がわからない。 喉は痛いし目は熱いし、でも体中が焼けそうで、なぜかひどく嬉しくてーそう、嬉しい。 多分、きっと、すごく嬉しいんだ、と気が付いた。 全身が震えるほど、俺は。 「……ねえ、ちょっと。雛香」 「…っ、な、に…」 「返事、聞いてないんだけど」 「…バ、ッカじゃねえの」 目を開ける。とびきりキッツい目つきをして、目の前の顔を睨みつけてやった。 こんなぐっちゃぐちゃな自分を見て、まだわからないなどと言うのか、こいつは。 大きく息を吸う。 引きつる喉をなんとか落ち着かせる。 今だけ、良いだろうか。雛乃を、隼人を、明日の決戦を全て忘れてーただ、目の前の男のことだけを。 きっとずっと望んでいた、この瞬間に応えることを。 それは、許されるだろうか。 全部ー雛乃を守ることも過去へ帰るための努力も、一切合切やり遂げてみせるから、なんて。 「雲雀、」 声の震えを、抑える。 「…ー好きだ。ずっと、前から」 真上、切れ長の黒い瞳が、 優しく暖かい色に染まった。 |