襲い来る決別 廊下を雲雀と歩いていると、バタバタと慌てた足音が聞こえた。 「…煩いね」 「誰だろう…ってツナ?リボーン?」 「雛香君!!と、雲雀さん!」 驚き立ち止まる雛香の前、 珍しく険しい顔でリボーンが小さな口を開く。 「雛香、雲雀大変だ。クロームの容態が急変した」 「え?」 雛香は目を見開いた。 「なんて恐ろしい能力でしょう…」 漂う白煙。 パラリ、落ちる壁の破片。 響くは、荒い呼吸音。 「さすが、ミルフィオーレの総大将…と言うべきですね。敵いませんよ」 レオナルドの体から実体化した骸は、 その左目から大量の血を流し、ただ跪く。 「また心にもないこと言っちゃって、喰えないなあ。骸君」 対する白蘭は、大した傷もなく笑顔を浮かべ。 「君のこの戦いでの最優先の目的は、勝つことじゃない。僕の戦闘データを外部の他の体に持ち帰れればそれでよしってとこだろ?」 「…ほう」 左目を強く押さえたまま、しかし骸は不敵に薄ら笑いを浮かべた。 「…だとしたら?」 楽しげに笑う、白蘭。 「叶わないよ、ソレ」 煙はゆっくりと薄れていく。 静まり返る部屋は、戦闘の残痕に侵されていた。 「この部屋には特殊な結界が張り巡らされてて、光や電気なんかの波はおろか、思念のたぐいも通さないって言ったら…信じてくれる?」 「クフフフ、何を言っているやら…」 ぐらつく体に笑みを歪め、骸は静かに左目の能力を発動させる。 そろそろこの体も限界が近い。 「楽しかったですよ」 そう告げ、消えるはずだった己の魂はー 「?!!」 「だからダメだって、骸君。この部屋は全てが遮断されてるって言ってんじゃん」 「な…」 そんな馬鹿な。 しかし、実際何かに弾かれるような感覚に襲われ、実体化を解くことができない。 こんなことが。 くっ、と顔を歪めた骸に、白蘭は笑みをたたえた口端を、うっすらと引き上げた。 「…ほんと、君には『毎回』楽しませてもらうよ。どうしてか、何をしても君はいつも僕の組織に入り込んできちゃうんだよね…….実体のない、まやかしみたいに」 「……?」 突如つらつらと話し始めた白蘭に、骸は眉をひそめ、その姿を見上げる。 何を言っているのだろうか。 疑惑に満ちる骸の内心は、 しかし、次の言葉に凍りつく。 「しかも、君は雛香チャンが大好きと来た。本当に、とんでもない人材だよねえ」 …雛香? ここで聞くとは思ってもみなかった言葉に、骸は完全に硬直した。 信じられない思いで相手を仰ぐが、 白蘭は顎に手を当て、んーと呟き目をあらぬ方へと向ける。 「まあ、最後はその雛香チャンに手を下してもらったんだし、悪くない思い出だったよね?」 何を、 何を言っているのか。 混乱を通り越し、まるで他人事のように呆然と聞き流す骸の前、 カツンと1歩踏み出す、白いブーツ。 「そりゃあ覚えてないよね。『この』世界の君の話じゃないもの」 冷たく目を光らせ、しかし口元は優しさすら感じる笑みをたたえ、 白蘭は骸を見下ろした。 その中指で、キラリと輝くマーレリング。 「…バイバイ、」 「!」 目を開いた骸の前、 突如白蘭の姿がぶれー。 |