I bite you to death! | ナノ

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消えない影を背負って


「…そうか、本国のボンゴレはそこまでダメージを受けてんだな…」
「ああ…」


早朝。
昨夜の混乱を経て、食堂に集まるのはリボーンと大人3人。

「俺は今から、単独で白蘭を獲る」
「無茶言わないで、ラル」
「止めるな雛乃…門外顧問への報告は、お前に任せる」
「ラル!」
「今はツナ達におまえの力が必要なんだがな。考え直すつもりはねーのか」
「お前と山本、雛乃がいれば充分だぜ。断る」
「…コロネロは帰ってこないよ」
「!」

平坦な声で告げられた言葉に、ラル・ミルチは勢いよく振り返る。

「雛乃、お前…っ」
「雛香と同じだ」

淡々と、雛乃はテーブルに視線を落としたまま呟いた。


「死者は……帰らない」
「…っ」


一瞬、剣呑な目をしたラルは、
しかし口をつぐむと自動ドアを開け外へ出た。
その目の前、場の空気に入れず立ち尽くしていたツナと獄寺には目もくれず。
「あっ…」
「よ、よお…」
慌てて2人が口を開くが、彼女は無言で去っていった。



(死者は……帰らない)


呆然と、ツナは心の内で雛乃の言葉を繰り返す。
頭に浮かぶのは、黒い瞳を細めて笑う、少年の顔。


本当に、雛香くんは…。




「とりあえず守護者の中でも即戦力…つまり、雲雀恭弥を連れてくるのがベストだな」
「雲雀さんを…」
「でもどこにいるんすか?」
「それがよくわかんねーんだ」
「雲雀さんは…あれ以来、消息が途絶えてるから」
「あれ以来…?」

目をそらし呟いた雛乃に、ツナが怪訝そうに首を傾ける。
だが、それを遮るように山本が朗らかな声をあげた。

「ま、なんか手がかりあるだろ!行ってみっか、な!」
「僕はちょっと用があるから一緒に行けないけど…ごめんね」

雛乃が申し訳なさそうに微笑む。
久々に見た彼らしい明るい顔に、ツナはほっと息を漏らした。




「……雛乃」
騒々しい3人が消え、急に静まり返った部屋にリボーンの声が響き渡る。

「何?」
「おめー、なんか隠してんな」

小さなヒットマンの言葉に、
ぴく、と肩を動かす雛乃。

「…ほんと、やだなあ。昔、雛香がリボーンには何でも筒抜けだってこぼしてたの思い出すよ」
「ごまかそうとして饒舌になるところ、雛香とソックリだな」

淡々と言葉を重ねるリボーンに、雛乃はただうつむく。

10年の月日を経た彼は、すぐに泣きそうな表情はしない。
ただ、苦笑いを浮かべるだけ。
痛々しい、大切な物を失った人間の笑みを。



「……僕は、ただ思い続けているだけだよ」



もう会えない、
愛しい片割れのことを。




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