迷子中の思考 で、予想通りに。 「……迷った…」 もう何回めかわからない後悔に頭を抱えながら、雛香はため息をつき廊下で立ち止まった。 一応、振り返ってみる。延々と続く廊下の風景。 前に向き直る。やっぱり同じ廊下が続いている。 思わず背中を壁につけた。ため息が出る。 「…ここ、どこだ…」 雲雀との修業(というより闘り合い?)が始まって早3日。 開匣してはならない、というのが条件なため、雛香は炎を宿したナイフと銃で闘うのが常だ。 あの雲雀が感心するほど精製度が高いリングのおかげか、一気に戦闘力は跳ね上がった。あの凶悪なトンファーをそれなりに凌げる程だ。 が。 『…ちょっ、お前!なんで開匣してんだよ!』 『僕は開匣しちゃいけないなんて決まりは作ってないよ』 『だからって、て、まっ!ハリネズミ!』 本日の修業内容の一部が頭に浮かび、雛香はまたも深々とため息をついた。 なんというか、横暴なのだ。しかも好戦的。 つまり、彼は10年前と何ひとつ変わっていないのだ。最悪である。 しかも見た目と攻撃力だけは上昇しているのだから本当の本当にタチが悪い。おかげさまで連日体はぼろぼろだ。人をなんだと思っている、あの戦闘狂は。 「…くそー…」 はあ、と息を吐き、雛香は壁にもたれかかったまま腕を目の上にのせる。視界を暗くする。 思い出すのは、球針態から出た時の雲雀の顔、 そして柔らかに触れた唇。 君に何かあったら、生きていけない。 「…期待、するだろーが」 あれ以来、雲雀とは何もない。 いや何もないもそもそも、別に付き合っているわけでも、好きと言われたわけですらないのだからそんなこと思う方がおかしい。そう、おかしいのだろうけれど。 『…それ以上されたかったんだ?』 愉しそうに笑んだ、切れ長の瞳。 「あれは俺が遊ばれた、っていう結論でいいのか…?」 それはそれでなんというか、もやもやする。 だって期待するだろ、あんなこと言っておいて、これとか。 我ながらなかなか女々しいな、ともう1度ため息をついたところで、ふと近くに気配を感じた。 「……宮野?」 「え」 腕を下ろし、首を回す。 廊下の向こう、薄暗がりの中、 眉をひそめた獄寺が立っていた。 |