歩み寄り 「……つまり」 「知るほどに謎が深まるばかりでね。匣というものは」 床に座り込むツナの前、上空で激しくぶつかり合う2匹のハリネズミに見向きもせず、雲雀は淡々と言い放つ。 「雛香と調べていたんだけれど、今のところまだ解明できてはいない」 外野でぽかんと雲雀とツナの戦闘を見ていた雛香は、突如名前を呼ばれ、ぱちぱちとまばたきを繰り返した。え、なに急に。 「覚えておくといい。大空の炎はすべての属性の匣を開匣できるが、他属性の匣の力を完全に引き出すことはできない。…どこかの誰かは別だったけれど」 「!」 目を見開いた周囲の真上、 ツナが開匣したハリネズミは、雲雀のハリネズミに取り込まれ、瞬時に破壊された。 「ツナ兄のハリネズミが…!」 「悲観することはないよ。大空専用の匣も存在するらしい」 息を呑むフゥ太やラルに背を向け、雲雀はまっすぐに歩を進める。 いまだ床に座り込む、雛香のもとへと。 「…宮野雛香」 「え、ハイ」 「君、時間あるでしょ」 「は?」 質問ではなく断定形で投げかけられた雲雀の言葉に、雛香はぽかんと相手を見上げる。 「ちょっとおいで」 「わっ?!」 ぐい、と突如腕を引っ張り上げられ。 前をスタスタと行く雲雀に、雛香は慌てて後をついて歩き出した。 というか。 (…腕放せよバカやろう…!) ぎゅ、と握られた腕を引っ張られる。 前を行く黒いスーツの背中を、雛香は恨みがましく見上げた。 その頬が赤くなっていることに、自分では気が付きもしないまま。 一方。 「…嫌な予感…」 アジトの長い廊下を、早足で進む1つの影。 「…すっっっごく嫌な予感が、する…」 顔に縦線を何本も入れ、思いっきり眉根を寄せた雛乃は、消えた兄を探す足取りを緩めず口元を引き攣らせた。 「…なんか、こう…雲雀さんと、何かありそうな…」 これが双子の繋がりなのか、 幸か不幸か奇妙な勘を発揮させる雛乃。 「…雛香、お願いだから…っていうかついこの前まで塞ぎこんでたから、そんなの無いって思いたいんだけど……お願い、お願いだから、雲雀さんに手出されないでよ……!」 そうして、 得てしてこういう予感というのは外れないものであったりする。 |