これ以上の喪失など 宣言通り、山本に凄まじい雨のカモフラージュを見せつけられ、自分が作らせたのだというアジトへ足を進めていけば。 「リ……リボーン!!」 「抱きしめて〜…こっちよ!」 「ふげー?!!」 「あはは、見覚えのある光景だ」 「これが見覚えあるって怖すぎだよ!やめてよ!」 リボーンに飛び蹴りされ床に転がったツナは、なんとか顔を上げると雛乃につっこんだ。 見覚えあるってどういうこと?俺この先10年間もこういう目に遭うってこと?! (…でも、無事でよかった) 10年後のリボーンは死んだ、そう聞かされていたツナは思わず涙ぐむ。 その様子を眺め、雛乃はそっと微笑んだ。 「…っていうか、そーだ、おかしいんだよ!過去に戻れないんだ!」 「それくらいわかってるぞ。おかしいところはそれだけじゃねーしな」 「ええっ?!」 「10年バズーカなのに、この時代は撃たれてから9年と10ヶ月ちょっとしか経ってねーんだ」 「はあああー?!」 叫ぶツナ。困惑に目を開く獄寺。 「俺にもさっぱりだぞ。だがここが並盛だっていうのが、せめてもの救いだな」 「えっここ並盛だったの?!てか日本?!」 「ツナぁ…そろそろ耳が痛いよ」 「えっごめん雛乃…って待ってよ!」 そんな唇とがらされても! いやだって全然理解できないし! 「ただ言えることは…過去に戻れない以上、ここで起こってるってことは、おまえ達の問題でもあるってことだ」 「「……!」」 リボーンの言葉に、息を呑む2人。 その様子を眺めていた山本が、無表情に口を開いた。 「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点が同時に攻撃を受けている」 「……え」 「もちろん、ここでもね…ボンゴレ狩りは、進行しているんだ」 その横、いつの間にか笑顔を引っ込めた雛乃も口を挟む。 ぎょっと目を開くツナと獄寺に、リボーンは僅かに肩をすくめた。 「お前も見たはずだぞ。ボンゴレマークの入った棺桶を」 「それって俺のことー?!」 可愛らしい声で紡がれた恐ろしい内容に、 ツナが顔にたて線を入れながら叫ぶ。 瞬間、 獄寺の顔が、大きくゆがんだ。 「てっめえ!」 「獄寺!」 肉を殴打する、鈍い音。 雛乃の制止も間に合わず、いきなり山本を殴り飛ばした獄寺の行動に、ツナは悲鳴をあげた。 「ひいっ、ご、獄寺くんっ?!」 「獄寺やめて、」 「ふっざけんな、てめえもだろ雛乃!!」 殺気立ち雛乃の襟首も掴み上げた獄寺に、背後から山本が肩を押さえ込んだ。 「……すまない、だから雛乃は離してやってくれ…」 「ざけんなっ、すまないですむかよ!!」 「やめろ獄寺。10年後のお前もいたんだぞ」 「!」 リボーンの一声に、獄寺はぴたりと動きを止めた。 のろのろと雛乃の襟から手を離し、うつむく。 「く、そ……」 「獄寺…」 痛々しいほど引き結ばれた口元に、 雛乃はただ、顔をゆがめる。 「敵のミルフィオーレファミリーの恐ろしいところは戦闘能力の高さもだが、なによりもやべーのは奴らの狙いだ」 「奴らは次々とこちら側の人間を消している…相手の、狙いは…」 「ボンゴレ側の人間を、1人残らず殲滅することだよ」 雛乃の冷え切った声音が、 静まり返った部屋に落ちた。 |