×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

06a

「ただいま!なまえ!」
「おかえりなさい」


夜ご飯を作って待っていると、玄関から元気な旦那さんの声が聞こえる。そのままバタバタと響く足音に今日は勝ったんだなと悟って笑みがこぼれた。昔から感情表現豊かな男は、負けた時は信じられないくらい沈んで帰ってくるのである。


「勝った!


ばたん!とリビングのドアが開けられてピカピカした顔の木兎が顔を出す。お味噌汁の味を見ていたので手が離せなかったけど、声をかけると木兎はいそいそと近づいてきて後ろから抱きしめた。


「おめでとう、良かったね」
「家に帰ったらかわいい奥さんがいるって最高」
「んん、くるしい…」
「今日は鷲尾がいたから絶対負けたくなかったんだよなー」
「RAIJINと試合って言ってたもんね」
「あいつのブロックめっちゃ怖い!でも打ち抜いたった!」
「すごい!」
「だろー!?」


よっぽど嬉しかったのかいつになくテンションが高い。ぎゅうぎゅうと抱き込まれて少しくるしい。仕方なくコンロの火をとめ、体を反転させて旦那さんに向き直る。すっぽりと包まれてしまう体格差に未だに照れてしまうけど、にっこりして背伸びをすれば嬉しそうに目を細めて木兎は顔を寄せた。

ちゅむちゅむと食むようなキスの雨を受けながら、どうにか落ち着かせないと止まらなくなっちゃうなと思う。このままヒートアップすれば、試合の余韻で収まらない熱をぶつけられかねない。


「ん、」


いい加減背伸びをしているのもつらい。もう終わり、というように逞しい胸板をとんとんすれば、後頭部に手が回って口づけはもっと深くなった。違う、もっとって意味じゃない!目を見開いて身体を押すがビクともしない。抗議したくても声は全て飲み込まれてしまう。

有無を言わせないこの強引さは、多分自分が都合よく解釈して続けているのを分かってるがゆえだ。


「あー…やっぱりダメ、我慢できない」


好きなように唇を吸われ、解放された頃には体に力なんて入らない。くたりと凭れかかると熱い息が降ってきた。なんだって…?抱き上げて寝室に向かおうとする旦那さんに慌ててストップをかける。


「だめ!先にシャワーとごはん!」
「シャワーは軽く浴びてきてるし!」
「お風呂温めてあるから!筋肉ちゃんとほぐして?怪我に繋がったらこわい」
「じゃあ一緒に入ろ!」
「今の光太郎止まらないから絶対いや!」
「絶対いや?!」


少々強すぎる「いや」という拒絶に、木兎はショックを受けたようだった。


「おれ、こんなになまえのこと愛してるのに…」
「う、」
「じゃあ、風呂は入ってごはん食べたらいい?」


高校時代より鋭さを増した猛禽類の、全然諦めてない目がギラギラと光る。体を支えるように腰に回った手がさわさわとあやしく動いて、この流れはまずいと冷や汗をかいた。


「頑張ったから、いっぱい褒めて」


ほら。甘ったるくねだるように、低い声が鼓膜を揺らす。おなかの奥がきゅんと疼いて思わずすり…と膝を合わせると、それを見逃さなかった木兎は意地悪く囁いた。


「ナニ想像したの?」
「、ばか…っ」


もう!早くお風呂はいってきて!と体を押せば、にこにこと目尻を下げて額にちゅっとキスを落とし、旦那さんは上機嫌で風呂場へと向かう。もう初めてではないのに、改めて宣言されると恥ずかしい。いじわる、と呟いたところで届かないけれど。

こういう日の木兎は止まらない。
終わったあとは何もしなくていいように、明日の朝ごはんの準備もしておこう。
-17-