生きる死体



あなたを愛すわたしは

何もかも間違いだったんじゃないかと
月のない夜の海に投げ出されたような
そんな気がする

珊瑚も遠い鯨も波も息をしていて
ただそこに漂うわたしだけが
拒まれるべき異物なのだと
そんな恐怖に襲われる


あなたを愛すわたしは

全てが正しくて自分だけが真実だと
木漏れ日の中で風に揺られるような
そんな気がする

人も雑草も大地さえも色を無くして
ただそこに有るわたしだけが
生を受けて泣き笑えるのだと
そんな悦びが湧き上がってくる


あなたを愛すわたしは

世界に見咎められた存在なのだと
古びた牢に手枷一つで繋がれたような
そんな気がする

雨露も錆も蜘蛛の巣もわたしを責めて
ただそこに伏すわたしだけが
理から逸脱した溢者なのだと
そんな寂しさが伸し掛かってくる


あなたを愛すわたしは

この世界で唯一穢れない神なのだと
始まりと終わりが手の内にあるような
そんな気がする

麦も雨も原子炉もわたしを祝福して
ただそこに佇むわたしだけが
朝日を受けて光り輝けるのだと
そんな幸福で満たされる

あなたを愛している
幸福で満たされてゆく








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