不幸選抜



彼女のお気に入りの
血色の悪いサンドバックは
微かに肺を動かしたけれど
僕らは口裏を合わせるように
目を失せて横を通り過ぎた

教室には虐めっ子と
虐められっ子と傍観者がいて
先生は同罪だと云うけれど
僕らは巻き込まないでくれと
その程度にしか思わなかった


幸せは産まれながらに
約束されていると云うのなら
どうして人は同じ環境で
産声を上げられないのだろう

幸せは自分で成して
勝ち取るものだと云うのなら
どうして人の命は簡単に
奪われたりするのだろう

子どもは親を
選べないと云うのなら
どうして母は皆等しく
愛してはくれないのだろう

子どもが親を
選んだと云うのなら
どうして母は僕ではなく
あの男を愛していたのだろう


新聞やテレビの中には
日夜不幸な誰かが映されて
僕らは可哀想にと嘆くけれど
他人と自分を見比べては
僕より不幸な命に安堵した








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