おママごと



ドイツ産のテディベアが
押入れの隅で泣いていたの
窮屈そうに体を曲げて
あなたの帰りを待つと云う

何もかもが順調すぎて
おかしいと思っていたところ
萎んだ胸がやけに重たくて

買い揃えた靴下だけが
不釣り合いに埃をかぶって
私は触れることもできずに
この家ごと燃やしてしまいたい

判を押して出て行った
彼の顔には靄がかかって
ピントのぼけた写真みたいだ


この街の空気は淀んでいて
空を見上げたところで
私でも知っているような星しか
見つけられないのに
人はあなたはそこにいて
笑っているなんて云うのよ

くたびれたお寺は寂しそうに
カラスの声を響かせて
私は花を活けることしかできず
冬は冷えるというのに
人はあなたはそこにいて
眠っているなんて云うのよ


途中止めのアルバムが
広げられたままで終わらない
私と会えないあいだにも
背が伸びているんじゃないかしら

どこで私を待っているの
それさえ教えてくれたなら
すべてを終わりにできるのに








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