君肉嗜食



顎関節に沿って切り取り
先ずは穴の開いてない右側から
耳朶を吸って形をなぞり
軟骨の硬度を奥歯で楽しむ

君の耳をむしゃむしゃ食べるの
渦巻き管はサザエに似てる
前庭を満たすリンパ液は
嚥下すれば塩辛くて御飯が進む


君のお肌に涎が出ちゃう

君の匂いでお茶碗一杯
君の声でお茶碗三杯
君のお肉でお茶碗十杯


蝿が集って聊か臭う君が
僕の舌に合わないのは
きっと膨らんだ胃のせいだ

それなら、こんな身体要らないね

乾燥したかぴかぴ米は
炊けば美味しく頂けるけれど
冷えたかちこち人間は
お湯に浸けても戻りません

面影さえ無くした君に
それでも満足している僕は
きっと満腹中枢のせいだ

それなら、こんな身体要らないよ


冷凍した君の臓器を
三日三晩かけて堪能するの
ドレッシングには
僕の瞳から出た搾り汁を

視界が歪むのは液体のせいか
失われた君のせいか
蕩ける君は甘美だけれど
口に何時までは居てくれない


もう僕も食べてくれよ

君の写真じゃコップ一杯
君の電子声じゃコップ半杯
君の記憶じゃコップ零杯








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