モグラ



大して発達していない鼻を
懸命にひくつかせる
もはや両目は只のお飾り

蝶は愛を知って獣に堕ちた
獣は愛し合って眸を無くした

手負った獣は牙を剥くの
尻尾まで毛を逆立てて
何にでも噛み付いた
愛した人さえ見えなくなった


「暗い地中がお似合いよ
 貴方の不恰好な姿も
 隠してくれるでしょう」

「その醜く汚れた手で
 触れるのは止して頂戴
 こっちまで腐ってしまう」


穴を掘る惨めな獣が地下に一匹
視力を失った眼は
猶、彼だけを投影していて

寂しさに埋もれた獣が地下に一匹
光を忘れた眼は
猶、彼だけを捜している


噎せる程に蒸れる土の中で
地上に耳をそばだてて
足音に一喜一憂する
彼女の啜り泣きが聞こえますか

彼の言葉しか響かない部屋で
たった一人に身を託す
恐怖に震えている
彼女の嬉し泣きが聞こえるでしょう


地球の中心に
引き寄せられる筈なのに
嗚呼
彼女の中心は
未だ変わらない儘らしい








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