足から根っこが生えてきて
僕を地面に縫い止めた
目に優しい色に覆われて
僕は陰に呑まれて行くのだ

街行く人は忙しなく
小さな木には目も呉れず
みんみん鳴いたアブラゼミ
テナント料に小便ですか

明るい茶髪とすれ違う
廊下の端で、木になる木

一人ぼっちのお弁当
教室の角で、木になる木


云いたいことも云えぬのは
僕が弱虫だからじゃない
木にはそもそも口が無い
だから仕様の無いことなのだ

お医者さまの聴診器
心臓の音が拾えません
干からびる幹に気を取られ
気付けば枯らしていたらしい

部長に昇格同級生
同窓会で、木になる木

上司の怒声が飛んできて
前屈みで、木になる木


本当に木になれたなら
それはどんなに楽だろうか
人込みで揉まれながら
立ち止まることも儘ならない

心臓は嫌でも働いて
僕を明日に連れて行くから
小鳥の声で目覚めたら
もう目は逸らせないのだ

小さな闘うニューヒーロー
オフィス街で、実のなる木








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