神様と王子様 (1/2)





ある所に一人の神様がおりました。

その神様はとても美しく、他の神様たちが声を掛けるのを躊躇うほどでした。

晩餐会に赴いても宴会に赴いても一人ぼっちの神様は、いつしか家に籠りきりになり、たった一人で箱庭を作って遊ぶようになりました。

神様は先ず海を創り、空を創り、陸を創り、木を植え、花を咲かせました。次に自分たちで動く物を創りました。その次に、自分たちで動いて話す物を創りました。

小さな箱庭で走り回る小さな生き物たちに神様は大満足です。


暫くして神様は理想の生き物を創ることに決めました。力と勇気と美貌と知性を兼ね備えた人間です。

その人間は直ぐに出来上がりました。箱庭で繁殖していた人間たちが出来上がった人間を「王子様」と呼んだので、神様もその人間を「王子様」と呼ぶことにしました。

神様が人間の名を呼ぶのは初めてのことです。神様は王子様を特別愛で慈しみ、王子様が欲するであろうものは全て与えました。優しい両親、賢い民衆、そして平和。

王子様はいつも笑顔で、神様も王子様の笑顔を見ているととても幸せな気持ちになりました。


けれど一つだけ上手く行かないことがあります。王子様の伴侶がどうしても創り出せないのです。

王子様と全く同じものを与えて創りましたが、どの人間も失敗に終わってしまいます。

ある人間は鏡に恋をし、ある人間は復讐心に身を焼かれ、またある人間は嫉妬心に狂いました。どれもこれも大切な王子様には不釣り合いでみすぼらしく、神様は頭を悩ませておりました。


神様は長い間思い悩んだ末に、自らが人間となり王子様に見合う素晴らしい妃となることに決めました。

神様は人間となる決意を固めると、王子様がいる箱庭へと降りて行きました。


人間となり地上へ降りた神様は直ぐに噂の的となり、そしてその噂は瞬く間に国中へと広がったのです。「絶世の美女がいる」と。

王子様に相応しい妃を思いあぐねていた王様と女王様は、神様を舞踏会に招くことにしました。

そうして開かれた舞踏会で、王子様と神様は優雅に踊ってみせました。初めは不平を並べていた女たちも、神様のあまりの美しさにいつしか目を奪われてしまい、神様と張り合おうなどと云う者は現れませんでした。


それから何度目かの舞踏会で、神様は王子様に告げました。

「どうか王子様、私を一生の伴侶として下さい」

勿論、王子様は頷くだろうと神様だけでなく、今や国中の者がそう考えていたことでしょう。

けれど王子様は小さく笑うと、首を横に振りました。

「貴女はとても美しく才気にも溢れています。けれど貴女は、私には完璧すぎる。貴女と居ると息が詰まってしまいそうなのです。」

神様は驚きました。

はしたなく喚くことも、陳腐な気持ちに揺り動かされることも無かったのに、何故王子様が自分を選ばなかったのか分かりませんでした。




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