I'll stand by me.



真似もたいがい簡単じゃない。なりたい私みたいな誰かさんに恋をして、私は、腕を動かしつづけている。けれど途中で静止して数秒。紙を丸める。ちがうちがうまちがえた。これは私じゃない。「ご名答」脳内で拍手喝采。鳴き声が聞こえた。いや、泣き声かもしれない。どちらにせよ耳障りだ。知っていた。この声を私は誰よりも知っていた。まあ、むかしの話。母さんと話していたら母さんは本を主観的に読むんだって。「自分は客観的に読むな」それは無理だって笑われた。でも幸せな二人なんて現実には存在しないってのを知っている。あ、私はロマンスものばかりを読むんだけど。お話の中ってのが分かっているから悲しい二人を途中やめにして、ぱたん、現実に戻れるわけだ。むかし友人に恋をしていた。ずっとむかし。でも彼女には彼がいて彼は私の彼でもあった。笑う彼女を見ているのが好きだった。それが幸せ。一緒に笑えたらもっと幸せ。そんな私を彼は笑う。お前が一番ひどい奴だって。彼のことが嫌いだった。彼女の彼だから好きだったし嫌いだった。でも、うん、すごくひどいね。かってに罪悪感を感じて泣けるなんてさ。彼女も泣いていた。私が泣いたら彼女も悲しくなるんだって。私は泣いた。たぶん産まれて初めて本当に泣いた。そうしたら彼女も泣くからもうどうしていいのか分からなくなった。右手が彼女。左手が私。そんな私と彼女の手を彼がにぎっていた。しばらくして彼女は彼の胸におさまった。彼は両手で彼女を抱きしめた。なんだ私、泣く必要なんて全然ないや。人間ってきたない生き物だ。でもそうだね。私が一番ひどいことには変わりないしね。私は泣いた。もう泣く理由もないのに。「かわいそうにかわいそうに」頭をなでるのも私だった。


2011.09/21
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