天邪鬼と憧憬世界



銀色のメスが林檎を剥く様に
君の爪が僕の皮を脱がしてゆく
産まれたままの姿の筈が
いつの間にか恥ずかしくなっていた

しゃがれた呼吸の合間には
どうやら君の名前は長すぎる
痛みはそのまま
生命維持装置に繋がっていたらしい


息苦しい日常が
不規則に身体中を占める
昔読んだ物語に出て来る様な君と
自分を比較しては途方に暮れた

無邪気に手を引く様な
そんな風に必要としてくれていたら
今みたいに縋り付かず
踏み込む前に抜け出していただろう

どんな言葉も君の前では
巣を無くした燕の様に
憐れめいてはぴーちく啼いて
丸で言い訳がましく響いてしまう


理由付け出来ない君が
根を張る様に侵入って来ては
護り続けていたものに
餌を与えて肥やして行くよ

怖いのは君が消える事じゃない
君を消せない僕になる事だ
項に感じた息遣いさえ
これ程容易く再現出来てしまった


君の嘘を真に受けて
もお、飛び込んで仕舞おうか








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