暴食暴君



味気無い君を噛み砕いて
僕の腸は君の養分を
上手に吸収するだろう

僕は優しいから
出来上がった滓同然の君を
もう一度お皿に乗せてあげる

ガーリック味の傲慢と
パプリカ色の嫉妬と
ペッパー辛い憤怒と
ビネガー臭い怠惰と
タバスコ似の強欲と
ミントの香りの色欲をまぶして

頂きます、召し上がれ



お腹が減ると食べなきゃいけない
これは動物の考え

お腹が減るから食べなきゃいけない
これは人間の考え


お手軽な生命線だった空腹が
今や娯楽か快楽かの入口に

ナイフもフォークも投げ棄てて
ジャンクなフードを咀嚼する
主食が特定保健用食品とは
マゾヒズムの顕れに違いない



強烈な刺激臭を纏って
スパイスまみれで震える君は
一口大で既に致死量

けれど本能を忘れて
危険信号を感知出来ない人間様には
余りに蠱惑的に映ってしまった

僕の必須アミノ酸は全九種類
ロイシンにイソロイシン
バリンとスレオニン
リジンにメチオニン
フェニルアラニンとトリプトファン
それから、君


仕方ない

一度動いた食指には
僕も勝てやしないから








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