少年欲望考察記





尻尾を立てた黒猫は、欲情した男を表しているとか。

これはNHKで絵画を解説していた誰かさんの言葉で、黒猫の横には裸の女が横たわっていた。


俺とその絵は、その何年後かに美術の教科書か何かで再会するわけだが、全くエロチシズムの欠片も感じなかった。

万年発情期というか、思春期だからか。常にお盛んな友人が居て、そいつは「この絵で抜ける!」なんて云いながら股間を扱いて、ゴミ箱をティッシュペーパーで山盛りにさせていたが、俺はお前のイき顔の方がおかずになるねと思っていた。


俺の前世は、多分、黒猫ではなく、黒猫の横で無表情のまま横たわる彼女の方だったに違いない。

全裸なのにフェロモンを微塵も発していない彼女こそ、真の本能主義者だ。

男の性を全て掌握した上で涼しい顔をしてやがる彼女の腹の中は、ファリシズムに煮え繰り返り、シーツに隠れた下半身は既に洪水を起こしているに違いない。


そして俺は、彼女に同情する。

彼女の欲望が潤うことは決して無い。求めれば求める程穴は疼き、疼けば疼く程また求める。悪循環と云うか、これが世界の真理としか云い様がない。


悲しかな。


受精を望む俺の精子は、シャワーから飛び出す水と共に、配水管で死ぬ運命さ。







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