あの日々は今までの人生の中で最も輝いていた時間で

今でも記憶の中で鮮明に焼き付いている





あの日、まだ俺は子供で君が何を言おうとしていたか分からなかったけど

今なら君が何を言いたかったのか分かる気がするよ




明日であの日からちょうど5年目
君はあの約束を覚えているだろうか

俺は一時も忘れたことは無いよ




nuovo secolo(新世紀)





「じゃあ、明日までに頼むな円堂」
「はい分かりました!じゃあ失礼します」

――ガラガラ





俺ももう19歳

外見的にも内面的にも、周りの環境もあらゆるものが変わった

例えばあの頃に比べて随分と身長は伸びたし(豪炎寺や風丸には勝てないが)、顔立ちも大人っぽくなったと思う(何故かたまに可愛いとか言われるけど)
俺のトレードマークであったじいちゃんのヘアバンドも今は部屋に飾ってある

それから、人並みに恋愛もした

周りは俺のことを変わらないなと言うけどそれは違うと思う
俺はもう昔ほど純粋ではない


でも、サッカーへの愛情は昔とは全く変わってない
一緒にプレイするメンバーは違えど高校でもサッカーはやってたし、大会でも優勝することが出来た
そのおかげか大学生となった今はプロのチームから声がかかるようになった

さっきのコーチとの会話もそのスカウト話だ
あるチームが俺のことをとても気に入ってくれてて何カ月でも待つから良い返事を期待してると言われていい加減待たすのも申し訳ないからと返事を催促されていた


別にプロに進んでも全然良かった

良かったけど・・・

プロに進んだら当たり前のことだが今以上にサッカー漬の毎日だ
最初のほうは周りに追いつくため、結果を残すために周りよりも必死に練習しないとならない為自分の時間が無くなってしまう

今の俺にはそれは無理だと思ったんだ


俺は5年前フィディオと交わした約束を信じていた


あれからお互い一度も連絡を交わしていない
フィディオがそれからどうなったのかも知らない
もしかしたらフィディオはあんな口約束忘れてしまったのかもしれない

でも俺はフィディオのことを信じたかった
彼が俺に何を言いたかったのか聞きたかった
今の俺ならフィディオが俺に何を言いたかったのか分かる気がするから



明日でちょうど5年だ



もし、明日連絡が来なかったら諦めよう

諦めよう










―――






「ただいまー」
「あー守お帰り!そういえば手紙来てたから机の上に置いてるわよー」
「手紙?一体誰から・・・っ!」

ダダダダッガチャ

「えちょ守一体今からどこに」
「ちょっと空港行ってくる!」
「空港って今から!?えちょっと」




―――タッタッタッタッタッ

「はぁはぁはぁっっ・・・はぁっはぁっ・・・フィディオ・・・!」

クシャ



Dearマモル

こんにちは、いやこんばんはかな?
久しぶりだねマモル。
突然の手紙許してほしい。
あれから一切連絡を取らなくてごめんね。
ちゃんとけじめをつけたかったからマモルとは踏ん切りが付くまで連絡は取らないようにしてたんだ。
手紙を送ったっていうことは踏ん切りがついたってこと。
あれから5年、毎日毎日君に会う日を夢見て頑張ってきたよ。
君に伝えたいことは沢山あるのだけれど取り敢えずこれだけ。
努力した甲斐あって俺イタリアの強豪チームから声をかけて貰ってね。
プロになったんだ。
あらゆる面で俺はあの頃よりは成長したと思う。
だから、約束を叶えに行くね?
あの日から5年ぴったりの明日、君のところまで行くから。

君に会えるのを楽しみにしてます。

fromフィディオ








―――


ガヤガヤガヤ―
ざわざわざわ――

「はぁはぁっ・・・明日会いに来るって言ってんのに、俺は何で空港に来てんだよ」
「えっとイタリアからの便は・・・あーついさっきので最終便か」
「乗ってるのかも分からないのになあ・・・ははっまあいいや一応探してみよう」

夜とあってか帰国した人やこれから海外に行く人やらで凄い人混みだ
ぶつかりそうになる旅行客を避けながら歩いていく

「って言ってもさすがに5年も経てばフィディオだって変わってるよなあ・・・それにこの人混み、俺分かるかな・・・」
「うーん・・・ちょっとこれは無理・・・かな。諦めて帰るか」


タッタッタッタ―

ぐいっ

「え!ちょっと誰っ・・・うわっ」

ぎゅっ
いきなり誰かも分からない人に腕を引っ張られ抱き締められた

「え、えっとえだ、だれ・・・ですか?・・・・・・・・・・・・・フィ・・フィディオ?」

一か八か言ってみると俺を抱きしめてた声の主は体を離して表情が見えるくらいの距離を取った

「―――当たり。よく分かったねマモルっ・・・久しぶり!まさか空港で会えると思わなかったよ!」
「お、おう・・・フィディオこそ良く俺のこと分かって・・・」
「・・・?どうかした?」
「あ、いや・・・」

今自分の目の前にいるのは自分がとても会いたかったフィディオ・アルデナ本人だ
けど、自分の中でフィディオはまだ14歳のまま
随分と成長した彼に目を奪われてしまった
スラッと伸びた身長、とても整った顔立ち、均整の取れたスタイル
こんなに外人と日本人は差が出るものか
自分とはまったく違くてびっくりしてしまった

「す、凄い変わったなフィディオ・・・身長とかもう全然フィディオのほうが高いんだな」
「それは勿論イタリア人と日本人じゃ平均身長が違うからね!えっと・・・181ぐらいかな」
「!俺とはほんと全然違うな・・・なんていうか、かっこよくなったな」
「ははっありがとう。マモルもでも随分大人っぽくなったよ!それからバンダナ外したんだね。最初はそれで迷っちゃった。でもそっちのほうが可愛いよ?なんていうか、うん。可愛く成長したねマモルは」
「なっ、それ俺が童顔だって言いたいんだろ」
「それは違うよっ!・・・ほんとかわいいよ」

フィディオが俺の頬に手を添えながらその端正な顔を近づけて言うものだから不覚にも照れてしまい体を押し退けた

「っ・・・可愛いとか言われても嬉しくないんだからな!そ、そそれでフィディオは俺に何か用があった来たんじゃないのかよっ・・・!」
「ふふっ・・・うんそうだよ、5年前君に言えなかったことを言いに来た」

フィディオはさっきの子供っぽい表情から一転
少し真剣な顔つきで俺の手を握って話始めた

「手紙にも書いたけど、俺プロになったんだ。次のリーグ戦から本格的にプレイする」
「あぁ読んだよ。本当におめでとう!」
「ありがとう!・・・俺さ、前に言ったよね。今は自分が自分を認められないからその時が来るまで待ってくれって。」
「あぁ」
「この5年で色々あったよ。サッカーのこともその他のことも」
「色々経験して内面的にも外面的にも成長したと思う」
「君はイナズマジャパンというチームの誰もが尊敬するキャプテンだ。」
「君の人を惹きつけるカリスマ性、サッカーの実力どこをとっても俺よりも上だったよ」
「俺は今までヒデというキャプテンの背中をずっと追いかけてプレイしてきた」
「でもそのままじゃいけない、一生君の隣に立つことは出来ない。」
「俺自身が皆を引っ張っていけるような存在にならないといけないって思い知ったんだ」

「俺はあれから頑張ったよ。今ならヒデや君と並べるくらいのプレイヤーになっていると思う。」

「だから、マモルに・・・今からあの日の約束を叶えるよ」
「一回しか言わないからよく聞いてね?」
「マモル――」


その瞬間俺の事を力いっぱい抱きしめて耳元で俺にしか聞こえないようにフィディオは言った













「初めて会った時からずっとずっとずっと、君のことが好きでした。
愛しています。」























その瞬間、この空間に俺たち二人だけいるような感覚になった
フィディオの声しか耳に入らない
周りの雑音が聞こえなかった
















それから数分後、体を離しフィディオが伺うように俺の顔を覗き込む















「ねぇ、マモルは?・・・俺のことを探しに来てくれたっていうことは期待・・・してもいいかな」



「・・・俺は―――」







その数分後どちらともなく口づけを交わした











































これから君と創る新世紀











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