Arrivederci(さようなら)




始まりがあれば終わりがある

そんな当たり前なことをこんなに恨んだことは無かったかもしれない
時の流れとは残酷だ

楽しいことは本当に一瞬で過ぎ去ってしまう















明日、イナズマジャパンが日本に帰国する。













「よしっ!じゃあ始めるぞー!」

「せーのっ」

「「「「かんぱーい!!!!」」」」



今日は皆明日、それぞれの国に帰国するということでイナズマジャパンFFI優勝祝賀会兼お別れ会と称したパーティーをしていた。
イギリスやアメリカ、イタリアなどイナズマジャパンと対戦した各国の代表達が揃って別れを惜しんでいた。



「フィディオ!」
「…あぁ、マルコ…」
「お前…エンドウのとこ行かなくていいのか…今日が最後のチャンスじゃないのか?」
「………そうなんだけどね…」


自分からは離れた所でマモルは色んな人に囲まれて最後の別れを惜しんでいる。
当初は自分もあの中にいる予定だったんだけど…足を踏み出せない自分がいる。

いつかは終わりが来るなんてそんなの分かっていたことなのに、毎日が楽しくて楽しくて。
どこか終わりが来ないんじゃないかと思っている自分がいた。


「いざ別れを目前にすると何にも言葉って出てこないな…ははったく俺はなにしてんだ…」
不甲斐ない自分に思わず笑いがこみ上げてきてしまった。


そんな俺に痺れを切らしたマルコが俺の背中を思い切り押す。

「うわっ!…ちょっとマルコ何す「何こんな時にうじうじしてんだよ!明日でほんとに最後だって分かってんのかよ!」
「…それはっ」
「分かってるならさっさと行けよ!…お前何にも言わないでこのまま終わっていいのかよ…!」



「…っ!ごめんマルコ…俺、行ってくる!」

「あぁ早く行ってこいほらっ…!」

フィディオの背中を応援のつもりで勢いよく押し出す。
さっきとは全然違う明るい表情でありがとうとお礼を言いながらエンドウのもとに駆け寄って行く





「ほんっと…サッカーやってる時は頼れる副キャプテンなのになー…上手く行くといいなフィディオ」






―――――


「―マモル!」
「フィディオ!お前いったい今までどこに「それはいいから取り敢えず俺と来て!」
マモルの手を思い切り引いてこっちに引き寄せる。
マモルや周りからの制止させる声とかは今は無視だ。
取り敢えず今はマモルと二人きりになりたかった。
マモルの時間が欲しかった。
それから会場を出て無言で走って走って…浜辺まで来てようやく立ち止まる。

「はぁはぁ…っマモルごめんっ、急に連れ出したりなんかして…!」
「ははっ…っはぁ…別に大丈夫大丈夫っ…ふぅ、それにしても急にどうしたんだ?」
「あ、あぁちょっと…君に伝えたいことがあって…でもあんな人の中で言えるような内容じゃなくてさ…」
「そっか…それにしても綺麗な月だなーっ」
「うんそう…だね」


トクトクトクトク
トクトクトクトク



心音が煩い




胸に手を当てなくても分かる
自分の心音が煩くてマモルの言葉が頭に入って来ない
頭が真っ白になりそうだ


でも今、今しかチャンスは無い

明日マモルは日本に帰ってしまう。
今だ、勇気を出せ…フィディオ・アルデナ…!

「…っマモル…俺君の「なあフィディオ」
「へっ?」

急に前を向いていたマモルが振り返って話しかけてくるものだから気が抜けた返事をしてしまった。

「あ…悪いっ何か言おうとしてたよな…?」
「ううんいいよいいよ…!先にマモルが話して!」

心構えしてたものが一気にさっきので崩れてしまった。
はぁ…しょうがないマモルの話を聞きながら心を落ち着かせよう。

そんな俺を見てごめんなと謝りながらマモルは海岸沿いを歩きながら話し始めた。



「俺さ、ここに来るとFFIが始まった頃を思い出すんだ。」
「ここで色々練習したり悩んだり…フィディオに二回目にあったのもここだったな」
「うん…そうだね」
「フィディオに一番最初に会った時、あの時から俺の本当の世界への挑戦が始まった気がする」
「マモル…」




二人で海岸をゆっくりゆっくり歩く
砂浜を踏みしめる音や波の音が心地よい




「俺はまだ正直FFIで優勝出来たこと、信じられないんだ」
「笑っちゃうけどこれは夢の世界でいつか目が覚めてしまうかもしれないと思ったりした」
「…雷門サッカー部はさ…最初は弱小チームで11人すら集まってなかったんだぜ」
「え!そうなのかい!?…とても信じられないね」
「だろ?俺もあの頃はここまで来れるなんて思ってもみなかった…でも」
「でも…?」


「ある時、まだ敵だった鬼道が率いる帝国学園が試合を申し込んで来たんだ。そしてその試合に勝ったないとサッカー部を廃部にするって言われてさ!」
「俺は必死に必死に足りない部員を集めたよ。そしたらそんな俺を見かねた幼なじみの風丸が入ってくれて…それからとんとん拍子で部員が集まって。」
「でも、やっぱり実力の差は圧倒的でな。みんなぼろぼろで俺ももう駄目だって思ったとき…」


「豪炎寺が来てくれたんだ」


「それでもやっぱり負けちゃったけどでもあの時豪炎寺が入れたシュートは今でも忘れたことはないんだぜ。多分…あの時から俺の、俺達のサッカーがやっと始まったんだ」
「俺が今ここにいるのは豪炎寺や鬼道、風丸、そしてどんな困難にも立ち向かって付いてきてくれたチームメイトみんなのお陰だ」
「ほんと…みんなには感謝しても感謝しきれないな…………フィディオ?」


思わず足が動くのを止める。
マモルの表情が今まで見たことがないくらい優しい笑顔で目が離せないのと同時に心が締め付けられていく。

あぁ俺は…ははっもう…だめだな











「フィディオ?」
「…うーうん大丈夫だよ。」
「そうか?…あ!フィディオさっき言おうとしてたことって」
「あぁ…やっぱり今日は止めるよ」
「え…でも俺明日日本に」
「だからさ…約束をしないかマモル」



マモルの小指を自分の小指に絡めゆびきりのふりをする



「5年…5年待ってくれ。絶対それまでに人としても、プレイヤーとしても、自分が自分を認められるくらいになってみせるから。そしたら今日言えなかったことを言いにマモルに会いに行くよ。…だから約束、だめ…かな?」


「…あぁ分かったぜ!じゃあ俺フィディオが会いに来るのを楽しみにしてるなっ」

「ふふっ…じゃあせーっの」











「「うーそつーいたらはーりせんぼんのーばすっゆーびきった!」」















―――――












翌日、みんなにお見送りをされながらイナズマジャパンは日本に帰国した


「あー行っちゃたなー……本当に言わなくて良かったのかフィディオ?」
「あぁいいんだ。それに昨日告白してたとしても俺はふられてたと思う」
「どうしてそんなこと分かるんだよ」


ぶつぶつ言うマルコをよそに俺は振り返らず歩き出す


「マモルに今までの話を聞いたとき、マモルにとっても他の彼らにとってもどれだけの影響をお互いに与えてきたか、そしてどれだけの固い絆で結ばれているのか…良く分かったんだ。今の俺じゃ割ってはいることさえ出来ない…それだけ大切なものを彼らから取り上げてしまうっていうことは大変なことだって分かったんだ」

「えじゃあフィディオはエンドウのこと諦めるのか?」

「まさか!だからマモルに時間を貰ったんだ…それまでに俺は自分自身が認められるようなプレーヤーになるって決めたんだ」

「そっか…じゃあ練習もっとがんばんねーとな!」

「あぁ勿論!絶対マモルに相応しいプレーヤーになってみせるよ!」

「よしっじゃあまずはグラウンドまで競走しようぜ!」

「そうだな!ほらっ早くしないと置いてくぞマルコ!」

「ちょっ…待ってくれよフィディオー!」













































俺は走り出す

君に伝えられなかった言葉を伝えに行くために



君はこの数ヶ月間の間で色々なことを俺に与えてくれたね
君はもう俺のかけがえのない人なんだ


5年という歳月はとても長いものかもしれない
でも君の隣に並ぶにはそれくらいないと俺は追いつけないんだ

走って走って走って必死で君に追いつくから

だからどうかその時まで


Arrivederci(さようなら)









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