短編 | ナノ
覚えたてのあいらぶゆー(後編)


あれから数日、俺はいまだに気持ちを伝えられずにいた。覚悟は決まっているのだが、なかなかタイミングがつかめないのだ。恋愛経験なんて皆無の俺は尚更。気持ちを伝えるのが遅くなればなるほどアイツへの想いは膨れ上がっていく。そのせいで部活にもあまり集中できていない。今日の部活も上の空。何度か注意をされながらもなんとか部活を終え、テツたちとコンビニに行く気もおきず、一人部室を後にした。

外はもう真っ暗で、街灯がちらほらあるだけだった。その中に一つ、白いものが見えた。目を凝らすとそれは後姿。見間違えるはずがない。俺がずっと会いたかった人。
「みょうじ!」
「わっ、あ、青峰くん。」
振りむいたみょうじはもともと大きかった瞳をさらに大きくさせていた。
「今帰りか?暗くて危ないだろ、送ってくぜ。」
「うん、部活長引いちゃって。ありがとう。」
『暗くて危ないから』なんてただの口実なのに、本当は『みょうじと一緒にいたい』っていう下心でしかないのに、みょうじは柔らかい笑みで「ありがとう」と言ってくるから、少し申し訳なく思わなくもなかった。
「……」
「……」
自分から帰ろうと行ったくせに話す内容が思い浮かばず、俺たちの間には沈黙が続く。ふとみょうじの方を盗み見ると目がかち合い心臓が大きく跳ねた。
「ど、どうした」
「あっいや、えっと…」
とっさに言葉を発したらみょうじは顔を真っ赤にさせ、しばらく視線を彷徨わせたあと、俺の目をじっと見つめやっと言葉を返した。
「青峰くんの目は、綺麗だな、って、思って…」
その言葉に違和感を感じた。どこかで、どこかで聞いた…、いや、見た…。そこまで考えてやっと俺は理解した。理解したとたん顔に熱が集まる。
「それっ、て…」
「うぇ…え、青峰くん、知ってたの…!?」
「えっと…だな…。お、お前の目の方が、き、綺麗だ!と、思う…」
「え、あの…つまり、」
「これから、よろしく。で…いいのか?」
「は、はい!よろしく、おねがいします。」
そう言って笑うみょうじは、今まで見た中で一番かわいかった。


(あー、俺今なら死んでもいいわ…)
(に、二回も言わないでよ!)


    
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