短編 | ナノ
覚えたてのあいらぶゆー(前篇)


夏目漱石が『I love you.』を『月が綺麗ですね。』と訳したのは有名だ。頭の悪い俺でも知っているくらいだからな。だから、俺がアイツに言ってもすぐにバレる。遠まわしの告白に使いたかったが、頭の良いアイツにだったら遠まわしどころかド直球な告白なるのが目に見えている。別に告白だから素直に好きだと言えば済むのだが、フられたらきっと立ち直れない。だったらせめて遠まわしに言って逃げ道を作っておきたい。なんて、柄にもなくそんなことを考えてしまうだなんて、相当惚れてしまったらしい。
(なさけねえな、俺。)
いっそのことテツに他の言いまわしを聞いてしまおうか。
「青峰くん?」
いや、そしたら俺がみょうじのことが好きだとバレてしまう。
「青峰くん。」
なんか弱みを握られる気分になりそうだ。
「いい加減気づいてください。」
「いでっ!何すんっうおおおおおテテテテツ!!」
「驚きすぎです。ヒドいです。」
「あ、ワリィ。」
びっくりした。テツのことを考えてたらテツが目の前にいた。
「考え事ですか?いくら悩んでも青峰くんの頭ではいい答えなんか出ませんよ。」
「んだと!?」
「みょうじさんのことなら尚更です。」
「俺だってなぁ…って、は?何で、」
「みょうじさんを見るときの顔とさっきの顔が同じだったので。」
「いや、そうじゃなくて、何で俺がみょうじのこと好きって知ってんだよ。」
俺がテツにそう問えば、テツはわずかながらに驚いた表情をして驚愕の事実を知らせた。
「青峰くんがみょうじさんのこと好き事は、緑間くん以外全員知ってますよ。ばれてないとでも思ってたんですか?」
「……」
ということは何だ、相談しても、いいってこと…なのか?もう何が何だか分からなくなってきた俺は思いきってずっと考えていたことを聞いた。
「なあテツ。」
「何ですか?」
「『I love you.』を『月が綺麗ですね。』以外でなんか良い言い回しってわかるか?」
「は。」
俺の質問によほど驚いたのか、テツはさっきよりも驚きの表情が色濃く出でいた。
「まさか、青峰くんの分際でそんな洒落た告白をするつもりですか。」
「ダメかよ!」
「ダメではないですけど…。わかりました。使えそうなものを書いておきますね。」
「ワリィな…」
(ホント、かっこわりぃな…)
テツがいなくなったこの空間で、一人自嘲した。


    
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