短編 | ナノ
強引ラブコール


「俺、みょうじのことが好きなんだ。」

私は一瞬で理解した。
これは罰ゲームだ。

「幸村くんって見た目によらず酷い事するのね。いや、昔から美人は怒ったら怖いっていうから、見た目通りと言ったほうがいいかしら。」
「別に怒ってないけど。酷いのはみょうじの方だよ、俺のキミに対する気持ちをまるで罰ゲームのように言うなんて。」
「え、違うの?」
「違うに決まってるだろ?」
「そんなことより幸村くん、早くそこをどいてくれない?切原くんの体操服姿が拝めない。」
「そんなことって酷いな、やっぱり酷いのはみょうじの方じゃないか。それに俺の告白を受けておいて赤也の体操服姿が拝めない?本当にみょうじは酷いね。悲しいよ。」

うざい。今までの会話を全てニコニコしながら話す幸村は悲しがっている様には到底見えない。罰ゲームは終わったんだ、さっさと自分の席に戻ってもらおうか、さっきから女子の嫉妬の眼差しが痛い。言い忘れたがここは教室。昼休みということでクラス全員の視線を浴びなくて済んだが、それでも居心地が悪すぎる。はっきり言って迷惑だ。

「ごめんなさい幸村くん。たとえこの告白が本気だろうと罰ゲームだろうと、私の答えはNOよ。」
「そうか、YESか。ありがとう、嬉しいよ。」
「聞いてた?私NOって言ったんだけど。」
「早速なんだけど、今度の日曜日、部活は休みなんだ。キミの家に行きたい。」
「なんで幸村くんの家ではなくあえて私の家を提案したんだ!?というか私NOって言ったじゃん!!」
「え、俺の家に行きたい?全く、なまえは意外と大胆なんだね。」
「ダメだこいつ妄想の世界で会話してやがる。」

それからペラペラとよくわからない妄想話を続ける幸村くんを無視して、グラウンドでクラスメイトとはしゃいでいる切原くんに視線を移す。かわいい。あのクルクルの髪がかわいい。猫目がかわいい。無邪気な笑顔がかわいい。あんな弟が欲しい。
そんなことを考えていると自然と口角が上がる。いけないいけない、と慌てて口元を隠したときに、視界の端にいる幸村くんは変わらずニコニコとこちらを見ていた。

「………なに。」
「なまえは俺を嫉妬させる天才だね。」
「は?」
「いくら俺に構って欲しいからって、俺の部活の後輩である赤也を微笑みながら見つめるなんて…」

本当にイケナイ子だね。そう言った幸村くんは、私のネクタイを引っ張り、キスと言うには甘さの欠けた、唇をぶつけるという行為をした。歯と歯がかち合い、口の中に血の味が広がる。
唇を離して、幸村くんの視線と私の視線が絡まる。そのとき、まるで私の心が彼に支配された、そんな錯覚を起こした。



(てへっ!なまえのファーストキス、奪っちゃった☆)
(あ、私のファーストキスの相手ペットの猫だから。)


    
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