名前を呼んで
俺には東京に住んどる従兄弟がおる。だから名字で呼ばれんのはあんまり好きやない。ややこしいっちゅうんもあるけど、なんか、一緒にされたないっちゅうか…まあいろいろあんねん!察しろ!クラスのみんなは名前で呼んでくれとる。
たった一人を除いては。
「忍足くん、はいプリント。先生に頼まれたから持ってきた。」
「おおきに…あと、謙也でええって。」
「あ、うん。忍足くんね。」
「何でやねん!」
「うおっ!」
こいつ、みょうじなまえは、一週間前に転校してきた、俺のことを『忍足くん』と呼ぶ唯一のクラスメート。もちろん最初に名前で呼んでくれって言うた。でも何回言っても直さへん。
「なあ俺名字で呼ばれんの嫌やって言うたよな!?何で名前で呼ばへんねん!」
「お、落ち着きなよ忍足くん!」
「なんでや!?」
俺はこんなに訴えてんのに『謙也』の『け』の字も言う気配がないなまえの肩を掴んで大袈裟なくらい揺すった。
「なんでそんなに怒ってるの?どうしたの忍足くん。」
「お前のせいやあほんだらあああ!」
「うう…頭がぐらぐらする…やめてよ忍足くん離してよ!」
アカン…コイツ日本語通じてへん。俺は渋々なまえを離して向き合った。
「ええか?俺の名前は、忍足謙也や。」
「え、知ってるけど。」
「謙也。はい、復唱。」
「謙也。」
「おしっ、じゃあ俺のこと呼んでみ?」
「忍足くん。」
「嘘やろ!?」
「え、忍足くんじゃないの?」
「いや忍足やけど!ってそうやないねん!…はぁ。」
頭痛うなってきた…。俺はぐったりと机に突っ伏した。パトラッシュ、僕もう疲れたよ…
「あ、死んだ。」
勝手に殺すなや。アカン、ツッコむ気力が残ってへん。
「ほら、コレあげる。」
そういってなまえが机に置いたんは飴ちゃん2、3個。これで俺の機嫌が直るとでも思っとんのやろか…
「この飴あげるからさ、元気だしなよ、謙也。」
「!?」
急いで顔を上げたけど、なまえはもう友達のところへ行ってしまってた。
俺はいつもより脈打つスピードが増してる心臓を抑えながら、ただなまえのことを見ることしか出来ひんかった。
たった一人を除いては。
「忍足くん、はいプリント。先生に頼まれたから持ってきた。」
「おおきに…あと、謙也でええって。」
「あ、うん。忍足くんね。」
「何でやねん!」
「うおっ!」
こいつ、みょうじなまえは、一週間前に転校してきた、俺のことを『忍足くん』と呼ぶ唯一のクラスメート。もちろん最初に名前で呼んでくれって言うた。でも何回言っても直さへん。
「なあ俺名字で呼ばれんの嫌やって言うたよな!?何で名前で呼ばへんねん!」
「お、落ち着きなよ忍足くん!」
「なんでや!?」
俺はこんなに訴えてんのに『謙也』の『け』の字も言う気配がないなまえの肩を掴んで大袈裟なくらい揺すった。
「なんでそんなに怒ってるの?どうしたの忍足くん。」
「お前のせいやあほんだらあああ!」
「うう…頭がぐらぐらする…やめてよ忍足くん離してよ!」
アカン…コイツ日本語通じてへん。俺は渋々なまえを離して向き合った。
「ええか?俺の名前は、忍足謙也や。」
「え、知ってるけど。」
「謙也。はい、復唱。」
「謙也。」
「おしっ、じゃあ俺のこと呼んでみ?」
「忍足くん。」
「嘘やろ!?」
「え、忍足くんじゃないの?」
「いや忍足やけど!ってそうやないねん!…はぁ。」
頭痛うなってきた…。俺はぐったりと机に突っ伏した。パトラッシュ、僕もう疲れたよ…
「あ、死んだ。」
勝手に殺すなや。アカン、ツッコむ気力が残ってへん。
「ほら、コレあげる。」
そういってなまえが机に置いたんは飴ちゃん2、3個。これで俺の機嫌が直るとでも思っとんのやろか…
「この飴あげるからさ、元気だしなよ、謙也。」
「!?」
急いで顔を上げたけど、なまえはもう友達のところへ行ってしまってた。
俺はいつもより脈打つスピードが増してる心臓を抑えながら、ただなまえのことを見ることしか出来ひんかった。
[ back ]