昔話をしませんか?
今日も今日とてみょうじはモテモテである。女子から。
「なんかあいつ見てるとだんだん男に見えてくるから怖い。」
「ああ、みょうじな、身長高いし顔立ちも中性的だから、ナンパも逆ナンもされそうだよな。」
ある日の昼休み、笠松と小堀とで学食で昼飯を食べていたところ、数人の女子に囲まれながら昼食をとっているみょうじを見つけ、冒頭の会話である。
「つーかナンパはありえんだろ。みょうじだぜ?」
「いや、そうでもねえぞ。」
「は!?」
「どういうことだよ。」
笠松の発言に驚きつつ話の続きを促す。
「俺とみょうじがまだ中一の時だったかな…」

 *

部活終わりの帰り道、俺とみょうじは肩を並べて歩いていた。別に一緒に帰っていたわけではないが、お互い負けず嫌いなこともあり、どちらも速度を落とすこともなく、ひたすら無言で歩いていた。のだが…
「最近この辺で不審者出るらしいよ。」
「はぁ?」
「笠松くんって可愛い顔してるから、気を付けたほうがいいよ。」
「はぁ!?」
何を言ってるんだこいつは、俺は男だぞ。言い返してやろうと思ったその時、
「キミ可愛いね、今帰り?よかったらおっぱい揉ませてよ、俺の舐めさせてあげるから。」
いきなり変なおっさんに話しかけられた。もちろんみょうじが。俺のことは眼中にないようだ。これはもしやさっき話していた不審者か。どうすればいいかわからずにおどおどしているうちにどんどん話が進んでいく。
「…ちょっと理解できないんですが。」
「だから、俺の、」
「そういうことではなく、なぜ私がそのような行為をしなくてはならないのか理解できないと言っているんです。」
みょうじは怯むことなく、むしろ攻撃的に言葉を放つ。
「ちっ、だいだいなぁ、こんな子供相手に勃つようなヤツのちんこなんか誰が舐めるかっての。」
「え、みょうじ…?」
「てめえのみてえなちっせえちんこはなぁ、犬か猫にでもなめさせとけやこのクズっ!」
「ひ、ひぃ!」
みょうじが言い切ると不審者は血相を変えて走って行った。
「はぁ、びっくりした。」
「いや俺はお前にびっくりしたよ!?」
「え、何で?」
「女があんなことスラっといえちゃマズいだろ!」
「だってさー、不審者って反応を楽しむんでしょ?だったらガチギレしたら勝てるかなぁって。」
「だからって…はぁ、もういいや、どうでも。」
それからしばらくして俺たちは別れた。俺はあの日の出来事を一生忘れないだろう。

 *

「…で、結局何が言いたかったんだ?」
「はあ?だから、みょうじだってナンパくらいされるって話だよ。」
「いや、それはナンパとは言えないんじゃ…」
「同じもんだろ。」
「小堀、こいつ殴っていい?」
「ははっ…お好きにどうぞ。」
「小堀!?」
長々と話をされたかと思えばとんだ爆弾話だった。この件で俺が思ったこととしては。

やっぱりみょうじは女じゃなかったってことだ。



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