「センパイ!ポッキーゲーム、しないっスか?」
全てはこの一言から始まった。
いつものように笠松と小堀とで昼飯を食ってたらいきなり黄瀬が教室に入ってきて冒頭の台詞である。
「なんでそんなことそなきゃならねえんだよ。」
「笠松の言う通りだぞ。だいたい、野郎同士でポッキーゲームとか絵図ら汚すぎるだろうが。」
「何も俺たちだけでやろうとは思って無いっスよ。みょうじセンパーイ」
黄瀬の視線の先には怪訝そうなみょうじの顔があって、ああ、女子とのランチタイムを邪魔されて怒っているんだな、と簡単に推測できた。
「...なに。」
「一緒にポッキーゲー」
「いやよ。」
「即答!しかも食い気味!」
そらそうだ、と思いながら黄瀬は放っておいて残りの弁当を食べ進める。即答されてもなおみょうじにせがむ黄瀬。よっぽど気に入っているのだろう。
「ええい鬱陶しいッ!あんまり私を怒らせるんじゃあない。ハウス!」
「やめてくださいっス!」
「やめて欲しかったらとっとと自分の巣に」
「わ、私、みょうじくんと、ポッキーゲーム...したいな。」
「やりましょう今すぐやりましょう。」
「変わり身早すぎないっスか!?」
「黄瀬、その手に持っているブツを渡したまえ。」
「ブツって...どうぞ。」
思ったようにいかなかったのか、不機嫌そうに頬を膨らませてポッキーを手渡す黄瀬。
みょうじはというと、ご満悦そうに女子とポッキーゲームを、って...
「はあ!?おかしいだろ!普通こういうのって男女がするもんだろ!?意味わかんねえよ!」
「俺は森山の普通がわからないな。」
「同感だな。」
俺の叫びを無視してポッキーを食べ進めていく2人。イライラがつのる俺と黄瀬。2人して奥歯を噛み締めてもポッキーの長さは短くなっていく一方。そしてついに唇と唇が触れそうなところまできた。さぞかしあいつは嬉しいのだろうと思っていたが俺は見逃さなかった、みょうじの口から一瞬ポッキーが落ちかけたのを。
あくまで俺の推測でしかないが、みょうじは彼女を気遣ってギリギリで放したのだろう。なんだ、ちゃんとあいつにも常識とやらはあるのか。感心していたのも束の間、
「!?」
なんと彼女は落ちかけたポッキーをうまく拾い、そのままみょうじに口付けた。
「引き分けだから、もう一回...する?」
彼女の言葉と笑顔に鳥肌が立つ。俺は初めて女の子が怖く見えた。
(みょうじセンパイ、俺とも、)
(丁重にお断りさせていただきます。)
決してレズではない!