クリスマスは特別な日ではない

花火大会の一件から、私はことごとく桃城くんを避け続けた。というか、テニス部というテニス部を避け続けた。夏休み明けの数週間経った頃は荒井に桃城くんと何かあったのかと聞かれ、1ヶ月経った頃には海堂くんにまで何かあったのかと聞かれる始末。そんなこんなで関わりを避け続けて現在12月中頃。つまり冬休み間近である。

「いつまでこんなこと続けてるつもり?何ヶ月経ったと思ってんの。てかよく桃城くん相手に3ヶ月も避けてこれたよね。」
「桃城くんもよく3ヶ月も粘れたよね。どんだけなまえのこと好」
「もうその話はいいじゃん!」
「いや、よくねえな、よくねえよ。」
「!?桃城くん…」

急に聞こえた聞き覚えのある声に思わず振り向いてしまえば、そこには間近で見るにはとても久しぶりの桃城くんがいた。

「もうちょっと我慢してよね、桃城くん。」
「え?」
「そんなこと言われてもよぉ…」
「なに、もしかして…」
「仕組んだに決まってんだろ?」
「………」

予想外の出来事に思考が停止する。どうして、なんで、こんなこと…

あ、そうだった。桃城くんは…

「…あっ……」

私は椅子から立ち上がり、教室の外を出た。……出たかった。のに、桃城くんに肩を掴まれて阻止された。

「この俺が逃すわけねえだろ。」
「………」

周りがざわつく。雑音に思考を奪われて身動きができない。歓声、罵声、冷やかし、全てが私に降り注いでくる。まるで敵を射る矢のように。

「来てくれ。」
「え?あっ…」

今度は二の腕を掴まれて引っ張られるがままに足を進め、着いた先はクラブハウスの裏だった。当然人気なんてあるわけもなく、こちらからしてみればあまり良くない状況となった。桃城くんと向かい合う形になり、合わせた目が反らせない。

「なあみょうじ、そんなに俺のことが嫌いか?」
「そんなわけ、」
「じゃあなんで俺を避けるんだよ。確かに、だ…抱きしめたのは…悪いと思ってる。だけど、こんなにも避けられるのは納得いかねえんだよ。」
「……桃城くん…」
「俺はもう充分待った。みょうじの気持ちを知りたい。」

もう、逃げられない。この状況からも、桃城くんからも。そう思わざるを得ないくらい、桃城くんの視線は熱がこもっていた。

「私…は、怖かった…。だから逃げてた。だって今まで友達として仲良くしてたし、友達だと思ってたのに、急に桃城くんの気持ちを知ってしまって……怖くなったの。」
「……そんなこと考えてたのかよ。ずっと。」
「そんなことって…」
「なあみょうじ。」

桃城くんはわざとと思えるほど私の言葉を遮り話を進める。その姿には確かに焦りがあった。胸が締め付けられるこの感覚は、一体何なのだろう…

「クリスマスの日、17時に駅前の公園に来てくれ。夏休みに待ち合わせた場所だ。内容は……もう分かってるよな、」
「そんな、む、無理だよ…」
「来るまで待ってるから。お前のこと。約束だぞ。」
「だから…あっ、桃城くん!………行っちゃった…」

どこまでも自分勝手な桃城くんに少しの苛立ちは感じるものの、苛立ちとは違うこの胸の痛みはなんなのだろう。そんな疑問を胸に、
私は教室へと戻った、

「あ、みょうじ、どうなっ」
「荒井、私どうすればいいのかな。」
「え、は、はあ?だから、どうなったか聞いてんだよ!」
「もうわけわかんないよ…」
「………」

荒井はなにも言わず、静かに頭を撫でてくれた。口は悪いけど、根は良い奴なのは知ってるから、少し心が軽くなった。

「…ごめんね、ちゃんと、決着はつけるから…」
「……格闘漫画かよ。」
「ふふっ、確かに。」





(クリスマスまで、あと少し)
| #novel_menu# |
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -