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うちの学校は身体測定が遅い。その分クラスの女子たちはゆっくりと体型を調節していく。モデルか。 「春休みだらけた分4月中に取り戻せてたー!めっちゃ嬉しい!」 「いいなー、私去年より体型崩れたかもー」 「えー?そんなことないよ!」 モデルか、うぜえ。 「みょうじの体重は…よんじゅう…」 「池やん、それ以上言ったら私はお前に何をするか分からない。」 「あ、気にしてんだ。」 「私太ってないから気にしてねえけど、女子への接し方としては0点だから忠告しといた。」 「そりゃどうも。」 ひらひらと力を抜き気味に手を振って私の元から立ち去った。去り際の顔はどこか含みを持たせた笑みを浮かべており、チラリを移した視線が妙に気になった。なんだあの謎絡み、私のこと好きかよ。 「池田と何話してた。」 「わ、荒井……」 「何話してた。」 「………ナイショの話。」 「は?」 「ひ・み・つ、はーと。」 わざと甘ったるい声を出して荒井の頬をつつくとすごい勢いで振り払われた。ちょっと傷つく。 池やん取られて拗ねてんなよ、ホモか。 「私のことが好きなのは分かるけど、そんなつっかかり方したらだめだゾ!」 「キメェ」 「冗談の通じない男だなあ。もういいよ。あ、桃ー!」 「あ、おい!」 私の腕を掴もうとする荒井の手をするりとよてけ桃のところへかけて行った。こちらに気づいた桃は少し面倒くさそうな顔をしたが構わず話しかけた。嘘、ちょっと傷ついた。 「お前今こっち来んなよ。」 「なんで。」 「何でもだよ。」 「身長いくつだった?」 「話聞けよ。」 「身長いくつだった?」 「………170cm」 「え、意外。荒井と1cmしか変わんないじゃん。」 「うるせえ、筋肉量がちげえんだよ。」 怪訝な顔をしながら頭をガシガシと掻き乱してきた桃はそそくさと池やんのところへ行ってしまった。やだなあなんでみんな逃げるんだろう。友達いないから話し相手がほしいのに。 口を尖らせて教室へ向かおうとすると隣に誰かが並んできた。まあクラスで私のそばに来るなんて物好きはだいたい決まってるけど。 「今度はなに。」 「別になんでもねえよ。俺も教室向かってるだけだろうが。」 「じゃあもっと離れて歩いてよ、友達だと思われんじゃん。」 「仲はいいだろ。」 「……それ自分で言う?」 「うるせえ。………なあ。」 「な、なに…」 急にトーンを落として話題を変える荒井に少したじろぐ。最近思うんだけど、コイツ距離感おかしくない?やたら肩組んでくるし隣歩く時の距離も近いし、顔がいいからドキドキする。 頬をかいてグダグダ間を作る荒井に痺れを切らした私は荒井の肩を軽く押して駆け足で教室へと向かった。なんとなく居心地が悪かったから。 階段を駆け上がっている途中で腕を引かれ思わずバランスを崩してしまい、足が階段を滑り後ろ向きに倒れた。これはもう死んだと確信したがそんなことはなく、荒井が抱きとめてくれたらしい。というか、腕引いたのも荒井だろ。殺す気か。 「急に走んなバカ。」 「話しかけといて間を作るなバカ。」 「………」 「ほらまた間を作る〜てかそろそろ離して。」 「悪い……いや、来月の体育祭……終わったらどっか寄り道して帰らねえ?」 「………は?それだけ?」 「なにが」 「それだけのためにわざわざ追いかけてきたの?馬鹿なの死ぬの?」 「なっ…」 「んなもん体育祭当日に言えばいいでしょ、私に友達いないの知っててわざと言ってんの?1ヶ月まえに約束とりつけるとかデートか。……デートか。」 「デートじゃねえよ。」 「クラスの女子の羨望の眼差しが楽しみだ。」 「デートじゃねえって。」 浅黒くても分かるくらいに顔を真っ赤にして否定してくるけど、デートって言葉に反応しすぎでしょ。全然可愛くねえ〜 「あ、桃ー!聞いてよ荒井に」 「だーから今こっち来んなって!ワンクッション置いてから来いって!」 傷ついた。 |