そろそろ潮時なんだろう。 一度叶った願いにさよならをしなくてはいけなかった。 先生、わたしね 先生のこと好きなんですよ ―――― 「先生、覚えてますか?」 「何がだ」 「わたし、保健係だったのにクラスの中で一番保健室に通ってたんですよ」 「ああ・・・そういやそうだったか?」 「え、来る度に『またお前か』って言ってたのに先生忘れたんですか」 「・・・いや。それよりお前に先生って呼ばれると何か苛つくな。まさかお前がここの教師になるだなんて思ってもいなかったぞ」 そう言って笑う先生に向かってわたしはム、としたけど笑って返した。 「星月先生、いらっしゃいますか?」 がら、というドアの開いた音がして一人の女子生徒が入ってきた。 その子の顔を見てわたしはあ、と思ったのだ。この子がきっと・・・ 「あ、すみません!お話中に」 「いや、こいつのことは気にしなくていい」 「こいつっていうのはないじゃないないですか!わたしだってかわいい生徒時代がありましたよ、きっと!」 「え?」 「ああ、こいつはお前の先輩にあたる。今、いくつだ?」 「二十ですけど」 「夜久の3つ上だな。こいつはみょうじなまえ、俺の元生徒だ」 「詐欺ですよねー先生ってばわたしより六つしか歳変わらないのに偉そうで!」 「そうなんですか?」 「みょうじ、夜久に変な情報くれてやるな」 「はいはい」 余談はさておき、と星月先生は夜久さんに保健委員の仕事を渡した。 夜久さんも真剣な顔で作業に取り組む。その様子をただじっと見ているしか今のわたしにはできることはなかった。 「先生はさ、夜久さんが好きなの?」 「は?」 夜久さんがいなくなったあと、なんとなく気になっていたことを先生に聞いてみた。 すると先生は目を見開いて、お前何言ってんのみたいな顔をしてわたしを見つめる。 「ここ最近わたしの名前呼んでくれない」 「はぁ?・・・いや、それはだな」 「最近会ってくれない」 「だからそれは」 「目を見てくれない」 「・・・それは」 「他に好きな人でもできた?」 「そんなことはない!」 「知ってる」 「だから!・・・って、はぁ?」 知ってる。そんなの先生の目を見てればわかるよ。 だけどわたしは心配ばっかしちゃうの。ちゃんと態度や言葉で示してくれないと心に響かないの。ねぇ、わたし面倒くさいでしょ? 「琥太先生、わたしは好きだよ。本当は言葉にするの恥ずかしいけどそうしないと不安になっちゃうから」 「・・・わかってる。俺だって」 「え?」 ふわりと抱きしめられて一言。 「好きだ」 心配性な彼女 「俺も恥ずかしい・・・んだよ。言葉にするの。それにお前にとってはたかが六歳の差であっても俺にとっては六歳も=cって思ってるんだ。彼氏でいいのかと不安になる」 「え」 「ん?」 「いや、先生ってばそんなこと思ってたの?意外!」 「・・・お前なぁ」 琥太先生、ともう一度呼べば恥ずかしそうに笑ってわたしの名前を呼んでくれた。 −−−−−−−−−−−−−−−−− ほしごころの流星様から頂きました! 素敵な小説ありがとうございます! |