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(9/14) 



「なぁなぁ、名前って虹見た事あるか?」
「虹?見た事あるけど、いきなりどしたの?」



昼休み、いつものメンバーで昼食をとっていると翼が突拍子もない事を聞いてきた。虹なんて誰でも1回は見た事あると思うんだけど。



「ぬぬぬ〜…梓と憂もか?」
「俺も結構見た事あるな」
「僕もあるよ。雨上がりの日とか高確率で見られたし」
「何で急にそんな事聞いてきたの?もしかして虹、見た事ないの?」
「うぬ…いつも家の中で発明してたし、外に遊びに行ったりしなかったから」



虹見た事ない人居るんだ、なんて思ったのは黙っておこう。なんかしょんぼりしちゃいそうだし。



「あれは?太陽に向かって蛇口から水出したら虹見えるやつ」
「あー、子供の頃よくやったやつか」
「そうじゃなくて!ちゃんと空におっきくかかってる虹が見たい!」
「あずさー」
「何。翼関係全部を僕に任せようとしないでよ。名前が何とかしたら?」
「無理無理。1番手っ取り早い方法言ったのに却下されたし」



虹とか雨降らなきゃ見れないし、そもそも雨降ったって見れるかもわかんないのに無理でしょ。翼もなんでいきなり言い出したんだろ?



「まぁ、今週末は雨みたいだし運が良ければ見られるかもよ?」
「本当か?」
「うーん…絶対とは言えないけどね」
「翼の運次第って事。ほら、早く食べなきゃ次の体育に遅れるよ」
「憂、次の授業何だっけ?」
「俺らは確か英語だったかな」



その日の放課後、翼はずっと虹についていろんな人に聞き回っていた。私達はただそれを見守ってるだけで何かをしてあげようとはしない。だって、あの翼が発明に頼ろうとしないから。














問題の週末。天気は雨じゃなくて快晴。



「晴れだね」
「暑いくらいに晴れだな」
「期待してた雨じゃなくて晴れだね」
「…翼は?」
「教室でうなだれてるよ」



うなだれてるって、そんなに雨降るの期待してたんですか。蛇口でばーってやるのはダメなの?あれも一応虹じゃん。



「……さーて、1時間目何だったかなー」
「考えるのやめたな」
「やめたね。僕教室に戻るよ」
「おー、またな」



考えるのやめたんじゃないよ?面倒臭くなっただけです。だって天気予報のお姉さんが雨降るって言ってたんだもん、私のせいじゃない。ずっとそんな事を考えてたらいつの間にか4時間目が終了していた。



「いつか降るかもしれないじゃん…」
「おーおー、そんないじけたお前にいいお知らせだ」
「いじけてないし!……あ」
「な、いいお知らせだろ?」
「翼の所行ってくる!」



廊下側だから一切窓の方なんて見てなくて、左隣りの憂を見たら空は薄暗くて今にも雨が降りそうな感じだった。にわか雨か何かかな?



「翼!」
「ぬわっ、名前?どうしたのだ?」
「外見て、外!」
「外?」
「名前、落ち着きなよ。雨降りそうなんだって?」
「うん!にわか雨っぽいけど虹かかる可能性大じゃない?」



宇宙食を食べようとしてた翼の手を引いて屋上庭園に向かって走る。梓には転ぶから走るなとか言われたけど私が楽しみになってきちゃって気にせず走り続けた。






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