「名前ちゃん、今日も居残り?」



夏休みが終わり暑かった日々が嘘の様に涼しくなってきた九月。彼女、名字名前ちゃんは今日も図書館で居残り勉強をしていた。元々勤勉だったのもあるけど最近はそれに拍車がかかったように難しい参考書と睨めっこ状態だ。



「郁先生!」
「お昼はちゃんと食べたの?」
「え?」
「君のクラス今日は午前で終わりでしょう?まさかずっとここに居る訳じゃないよね」
「あ…」



名前ちゃんは僕が担当する天文科だけど教える学年が違うので余り接点はない。それでも気にかけてしまうのは、卒業した月子ちゃんみたいにこの学園に女の子一人だけという状況だから。

琥太にぃが前より忙しくなって余り気にかけてあげられなくなった分、僕が様子を見ててあげようと思ったのもある。まぁ、理由は他にもあるんだけど。



「で、どうなの?」
「…食べ忘れました」
「だと思った。ちゃんと食べなきゃまた星月先生のお説教食らっちゃうよ」
「う、それは嫌です…」



名前ちゃんは一度集中し始めると誰かが止めるまでずっと机に向かってる、驚異的な集中力の持ち主だ。

先月もテスト期間中にご飯も食べず猛勉強していたせいで貧血を起こして、琥太にぃに説教されていたし。



「じゃあ今日の勉強はここまで。部屋に戻って着替えておいでよ」
「え、何でですか?」
「僕と食堂に行くの。連れてかなきゃ食べないでしょ、君」



そう言うと少しだけ頬を赤くした名前ちゃん。今まで数多くの女性を相手にしてきたけど、こんな些細な事ですぐ赤くなる子は初めてだ。

わかりました≠ニ小さく呟いた彼女は勉強道具を片付けるとパタパタと走って図書館を出て行った。



「あ、待ち合わせ場所言うの忘れてた」



賢い彼女の事だ、きっと食堂で待っていれば来るだろうから先に行って席を取っておくとしよう。腕時計を見るとまだ六時前。夕食には少し早いだろうけどその分ゆっくりできるし、いっか。

途中保健室に寄って琥太にぃも誘おうとしたけど、どうやら今日は会食があるみたいで断られてしまった。



「さて、何して待ってようかな」



こんな風に人を待つなんて久しぶりだ。やっぱり時間が早いせいか生徒はまだ一人も居ない。このままだと名前ちゃんと二人きりで食事する事になっちゃうな。



「すみません!遅くなりました…!」
「いいよ、そんなに待ってないから」
「はいっ…あれ、食堂誰も居ない…?」
「そう。僕と名前ちゃんの二人きり」



どうゆう反応をするのか見たくてわざと二人きりを強調すると、名前ちゃんは予想通り顔を赤くした。すべてにおいて初々しい反応を見せる彼女は、密かに僕のお気に入りになっていたりする。

だからこれから少しずつ僕に慣れて、いつか僕色に染まってくれないかな。なんて願いを持ってる僕は、きっと教師として失格なんだろうな。






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