放課後16時半の屋上庭園。いつもの約束の時間、いつもの場所。

「直獅。」
「おう、お疲れ。」

今日は天気がよかったから、夕日がすごく綺麗だ。燃えるようなオレンジがなんだか直獅みたい。

「テ、テストの採点終わった?」
「うん、昨日ね。」
「俺、計算苦手だからなー。それに時間取られてなかなか終わらないんだよ…なー。」
「電卓使えばいいじゃん。」
「……………あ。」
「バカ。」

私たち二人は星月学園の教師であり、恋人同士だ。いつもこの時間は、何か特別なことをする訳じゃない。ただ二人でダベったり愚痴を溢したり。でも、一日の中で唯一二人きりでいられる大切な時間。

「ここ来る途中さー、また粟田くんたちに付き合ってるのかって聞かれたんだよねー。」
「ししししつこいなー、アイツらも。」
「お互いいい年なんだから、そろそろ結婚しろとか。」
「……ったくアイツら余計なことを…。」
「ん?」
「いや、別にー?」

私たちは同期でもあるし、生徒たちのまえでも二人でいることが多いから付き合っているって噂があるらしい。それについては、否定も肯定もしていない。

「そろそろヤバいかもね。バレるかも。」
「……お、おう。」
「直獅?」
「ん?」
「なんかあった?今日の直獅、なんか変だよ?」
「い…いやいやいやいや!そそそそんなことないよ!」

ボーッとしてるかと思ったら急にソワソワしだして、私に何か隠してるみたい。

「…怪しい。」
「なにもないって!」

変なの。直獅が変なのはいつものことだけど、教育実習で初めて会ったときから今までで一番変。

「…あの、さ。」
「ん?」
「今日さ、クラスの奴らに…言ったんだ。俺たちのこと。」
「…は!?なにもなくないでしょ!」

しかも生徒には隠した方がいいって言ったのは直獅なのに。バカ直獅、やっぱり変!

「ちょ、名前落ち着け!」
「直獅が落ち着きなよ!」
「わかった、わかったから…聞いて?」

そう言って直獅は私の手を握る。しばらく目を伏せてゆっくり深呼吸。そして私の目をしっかりと見据える。

「今日、帰りのHRでさ…名前にプロポーズするって言った。誰かに言わないと、いつまでも名前を待たせることになると思ったから。」
「……え。」
「絶対幸せにする。だから…俺と結婚して欲しい。」

そう言うと、直獅はポケットを漁って小さな箱を出す。その中身はもちろん…。

「これ、一応給料三ヶ月分。」
「……な…お………。」

嬉しいはずなのに、涙で直獅の顔が見えない。嬉し泣きなんて初めてかもしれない。

「受け取ってくれる?」
「……当たり前じゃん。」
「…よかったー!」
「わっ、直獅?」

突然腕を引かれて抱き締められる。直獅も泣いてるの?

「ちょ、恥ずかしいから顔見ないで…。」
「苦しいよ……。」
「あっ、わり!」

慌てて体を離す直獅。目にはうっすら涙がたまってるように見えた。

「ありがとう、名前。」
「うん。ありがとう、直獅。」

そして直獅は私にキスしたあと、左手の薬指にゆっくり指輪をはめた。

「ははっ!直獅顔真っ赤だよ!」
「うるせー!夕日のせいだ!」

そして次の日、私たちはすれ違う生徒全員にからかわれるのだった。





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