12月25日 午前11時30分。
私はバイトに向かう為に家を出て、自分の家のポストに予備の鍵を投函した。
哉太くんはまだ寝ている。とりあえず軽いご飯と置き手紙を残して来たし、あとは自分でなんとかやってくれるだろう。
「………よしっ。」
イヤホンをしてマフラーに顔を埋める。クリスマス当日にバイトって…。お客さんには寂しい女だと思われるんだろうな。
「…いってきます。」
夜中、頭を撫でられる感触がして目が覚めた。目は開かなかったけど、寝ぼけた頭で誰だろうって必死に考えた。哉太くんなんだろうなってわかった。だって家にいたのは、私と哉太くんだけなんだから。
その感覚が気持ちよくて、再び眠りに落ちようとしたとき、聞こえた言葉があった。
『好きだ』
きっと寝ぼけてるんだ、聞き間違だって。その時はそのまま眠った。けど、朝枕元にあったプレゼント。
星のネックレスだった。
ジュエリーは独占欲の現れだって、まぁちゃんがこの間言ってた。(本物の宝石ではないと思うけど)
「ハァ。」
深くついた溜め息が白くなって虚空に消える。もし、あれが聞き間違えじゃないんだとしたら。もし、まぁちゃんの言ってたことが本当なんだとしたら。
「んな訳ないか。」
これ以上考えたら、次哉太くんに会ったとき、変に意識してしまいそうだ。そう思った私は、頭を軽く振って歩くスピードを速め、バイト先へと急いだ。
頭にはあの手の感覚が残っていた。イヤホンからは少し前に流行ったラブソングが流れていた。
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