「最終バス…時間すぎてる……。」
「ははっ、んなバカな…。」
「いやマジで、大マジ。」
バスの時間は20時30分。現在、時計の短針は8と9の間を、長針は7を指している。完全に終わりだ。
「…あっ、実家は?私の家の近くなんでしょ?私と一緒のバス乗れば、実家行けるじゃん!」
「幼なじみの親と旅行中…。」
「……わぁーお。」
実家に帰るのは29日にする予定だったから、もちろん実家の鍵なんて持ってきていない。
「ど…どうしよっか……。」
「いいよ、歩いて帰るよ……。」
「星月学園まで何時間かかるの?」
「2…時間くらい。いや、それ以上かも…。でも…歩けない距離では…ない…。」
「ちょっ、白目向いてるよ哉太くん!」
そりゃ気も遠くなる。クリスマスに1人で2時間も歩くなんて…。寮に着いたら22時半過ぎだ。しかも雪降ってるし。
「そうするしかないんだ、パト○ッシュ…。」
「こんな時間に危ないよ、ネ○!」
「でも…でも……。」
ちょっとでも気を緩めたら泣けそうだ。そんなことを考えたら、さらに寒さが増してきて足が震えた。
「ウチ、来なよ。」
「……………………はい?」
「仕方ないでしょ、それしかないんだから…。」
マフラーに顔を埋めてモゴモゴと喋るなまえ。それって泊まっていけってことですよね?そうですよね?
「いやいやいやいや!それはさすがに…。」
「嫌なの?」
「そうじゃなくて、迷惑じゃ…。」
「クリスマスだから…ウチの両親出掛けてる。」
「あ、そうなの?」
「うん。今日はどっかに泊まると思う。仲いいんだ、ウチの親。」
「へー。」
「…だから来なよ。」
「……すみません。」
なんやかんやあって、仕方なく今日はなまえの家に泊まることになったんだけど。
バスに乗って、二人で窓の外の恋人達を眺めてたときに気がついたことがある。
両親いないって…
もっとダメだろォォォォォ!
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