「すみません、本当に。」
「帰ってもどうせ暇ですし。」
「でも夕飯のお買いものですよね、それ。これから準備なんじゃ…」
「ああ、俺んチは飯遅いんで。」
「そうですか、重ね重ねすみません。」
昨日から謝ってばかりだな、この人は。
「あ、そっちの肩濡れてますよ。」
「え。」
「このハンカチ使ってください。」
「いや、悪いですよ。」
「私も傘入れてもらってるんで。」
俺の肩より低い身長。化粧っ気のない顔。キツイ香水のにおいもしない。でもバイトしてるってことは高一だろうか。どこの高校なんだろう。名前とか聞いてみようか。
「あの、高校とか…」
「あ、東高校のみょうじです。」
「東…」
すごい進学校じゃないか。
「アナタは?」
「星月学園の七海です。七海哉太。」
「星月学園!?いいなー!!」
「え。」
「あ、ごめんなさい取り乱して…」
「いえ。」
「じゃあ、私の家ここなんで。」
「あ、はい。」
「本当にありがとうございました。またコンビニ来てくださいね!」
頭を深く下げて家に入って行く彼女。下の名前聞けなかったな。みょうじさんか。星月学園に興味があるのだろうか。絵に描いたようなイイコ。みょうじさん。
あ、ハンカチどうしようか。
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