土曜日の夕方7時。11月にもなれば、外はすでに真っ暗で天文台から星がはっきり見える。そして…寒い。
「っくし!」
「大丈夫ですか?」
久々に七海くんに会えるから、目一杯のおしゃれをしてきた。なのに結局七海くんに迷惑をかけているなんて。
「大丈夫、ごめんなさい…。」
「ほら、俺の上着貸すから。」
「え、」
「…ん?」
「……だだだだだダメだよ!七海くんだって寒いでしょ!」
彼氏みたいな発言をする七海くんにときめいてしまった。七海くんってば、しばらく会わないうちにさらにかっこよくなったんじゃ…。
「風邪ひきますよ?」
「七海くんこそ!」
「だったら…」
「ダメダメダメ!帰るのはダメ!だって今日の星は今日しか見られないんですよ!今日見なきゃ損、損!」
超早口。必死すぎる、私。だって久々に会えたんだから、すごく楽しみにしてたんだから。寒いから帰ろうなんていう訳にはいかない。
「そうですけど…」
「私のことはいいですから!」
「よくないですよ!星と自分の体どっちが大事なんですか!」
「うっ…。」
「ね。だからどっか暖かい場所行きましょう?」
「え、帰るんじゃなくて?」
「…いや、俺だってまだ帰りたくないですよ。話したいこともたくさんたまってるし。」
びっくりした。七海くんがそんなことを思ってるなんて。私ばっかり浮かれてた気がするけど、そういえば七海くんも『会いたい』って言ってくれたんだっけ。
「七海くん。」
「はい?」
私は七海くんが好きだよ。だったら七海くんは…。
「七海くんって、私のことどう思ってる?」
「え…。」
純粋に疑問に思った。でも聞くつもりなんてなかった。口が勝手に動いた。
「…な、なんでもない!冗談冗談!寒くてどうかしちゃってるのかな。さ、早く行きましょう!」
「ちょ、みょうじさん…」
でも答えを聞く勇気はなかった。
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