ここ最近、哉太がずっと悩んでいる様子だった。そして今日、学校が終わってすぐ、哉太がより深刻な表情でバス停に走っていくのを見た。
とりあえず俺は放課後、ちょっと散歩をしようと学園の周りを歩いていた。そこで見たのはバスから降りてくる哉太だった。
「哉太!」
「おう、錫也!」
「お出かけ?」
「ま…まあな。」
「へー。いいことあったんだね。」
「は?」
「だって哉太、今すごくいい顔してるよ。」
『学校出るときはこんなんだったのに』と、変顔をしてからかってやると顔を真っ赤にする哉太。
「そんな顔しねーよ!…でも、いいことはあった。」
「そっか。」
哉太の肩を軽く叩いて、俺はまた歩を運ぶ。みょうじさんと仲直り出来たんだな。まあバスから降りてきた時点でわかってたんだけど。
もっと時間がかかるかと思ったけど、哉太が行動的だったのに少しビックリしている。哉太も少しは成長、したのかな。
これも全部…
「錫也!」
突然呼ばれて振り返る。するとそこには、さっきとは違って少し複雑そうな表情の哉太がいた。
「あれからずっと気になってたんだけどさ…。」
「なにが?」
「この間言ったよな、いつまで子供でいるつもりだって。」
「ああ。」
言った、かも。だって哉太がいつまでもモタモタしてるから。いい加減気づけよって意味で。
「あれってどういう…。」
前言撤回。やっぱり哉太は哉太だ。でも俺の言葉を真に受けて、悩んでる哉太が少し面白くて。もう少しからかってやろう。
「ヒント。なんで哉太は今日、わざわざみょうじさんに会いに行ったんだろうね?」
「ますますわかんねーよ…っておい錫也!待てよ!つか、なんでみょうじさんの学校行ったこと知ってるんだよ!」
へぇ。学校まで行ったんだ。
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