「みょうじさん!」
「…………。」

俯いて歩くみょうじさん。イヤホンをしているようだった。そんなみょうじさんの目の前に立ってそっと肩を叩くと『ひぁっ!』って変な声をあげて驚かれた。

「な、なみ、く……。」
「あ…の……。」
「………っ!」

俺の手を振り払って逃げだすみょうじさん。慌てて俺もみょうじさんの手を掴む。思った以上に力が弱かった。

「なんで逃げるんですか?」
「………………。」
「なんで電話出てくれないんですか、なんで連絡くれないんですか、なんで錫也に本渡したんですか?」
「………………。」
「なんで目合わせてくれないんですか?」

頑なに口を閉ざすみょうじさん。目にはうっすら涙。俺は掴んでいるみょうじさんの手をぎゅっと握りしめた。

「なんで…。」

するとみょうじさんはやっと口を開いてくれて。ポツリポツリと言葉を紡ぎだした。

それは俺にさえわからない俺のことで。







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