七海くんに連れられて人のいない廊下まで来た。七海くんは私の手を握っている反対の手で口元を抑えて深い溜め息をついている。

「あの…七海くん、手………。」
「…わっ!すすすすいません!」

慌てて私の手を離す七海くん。顔が真っ赤だ。きっと私もだけど。それってどういう意味なの?なんでそうやって赤くなるの?なんて聞けない。

「すいません、いきなり。」
「いや…大丈夫です。」
「アイツら騒ぎ出すとしつこいんで…。」
「…………。」
「………………。」

沈黙。

何か話さなきゃって思って一生懸命考えるけど、何も思いつかなくて。ただただ二人で立ってるだけ。

そしたら何故か、今までの七海くんとの思い出がフラッシュバックしてきて。コンビニで私を心配してくれたこと。傘の中で見上げた横顔。一緒に見た夜空。天文台からの景色。私を気づかいながら歩く姿。そして、私が彼女じゃないって、必死に否定する姿。

喉の奥が締め付けられる感じ。実際私は彼女じゃないのに。

「………っ…。」

今は涙を堪えなきゃ。

「みょうじさん…?」

七海くんがびっくりしてる。困ってる。止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ。

「…………うっ、」

でも一度溢れた涙は止まらなくて、止まれと思うほど溢れて。

「……ごめっ…ん…。」

それから七海くんは私が泣き止むまで何も言わずに頭を撫でてくれた。

ほら、またそういうこと。

私は確実に自覚した。

七海くんが好き。







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