9月の後半から始まった文化祭準備。それから時間はあっという間にすぎて文化祭当日だ。

15時に校門前で待ち合わせた俺とみょうじさんは、二人でたくさんの人が行き交う廊下を歩いていた。そう、二人で。辺りを興味津々に見回して歩くみょうじさん。なんだか危なっかしい。

「ねえ、七海くんのクラス見に行きたいな!」
「ああ、いいっす……ん?」

いや、駄目だ駄目だ駄目だ。絶対に駄目だ。みょうじさんと二人でいるところをクラスの奴らなんかに見られたら…。絶対にからかわれる!


「七海くん?」
「……あっ、まずコッチから行きましょう!」
「七海くんのクラスは?」
「だだだだだから…その……」

変な勘違いされたら、絶対めんどくさいことになるしみょうじさんにも申し訳ない!

「あっ、七海〜。」
「げっ!」

梨本、粟田、橘、柿野、柑子の仲良し5人組に加え、担任陽日直獅。俺が今二番目に会いたくない奴らだ。

「おっ、なになに?彼女?」
「聞いてないぞ〜!」
「年下?このロリコンめっ!」
「ひゅーひゅー!」
「ち…違っ!」

う…うぜぇ…。ひゅーひゅーとかいつの時代だよ。つかみょうじさんは(こう見えて)年上だっつの。

ほら、やっぱりこうなる。いつも冷静な柑子でさえも「そっとしといてやれよ…。」とか言っといてなんだかニヤニヤしている。そしてさらに……

「七海ぃぃい!お前なんかにも彼女が出来たんだな!先生は…先生は嬉しいぞぉぉぉお!」

なんて直獅が大声出すもんだから、廊下にいた人の視線が全部俺に集まった。

「ちょっ、直獅やめろって!」
「照れることなんてないぞ、七海。恋をするのも青春だ!じゃ、幸せになっ!」

語尾に星がつくような勢いで、爽やかに走り去って行く直獅。タコ殴りにしたい。

顔が熱い。

チラリとみょうじさんを見ると顔を赤くして俺を見ていた。二人して同時に視線を逸らすとやはり野次がとんでくる。

「うーらやましーい!」
「いい加減にしろって!マジで違うから!」
「……えー。」
「なんだよその目は!」
「照れんな照れんな。」
「っだー!もう!勝手にしろ!」
堪えきれなくなった俺はガッとみょうじさんの左手を握りその場を足早に去った。

「お手手繋いでどこ行くのー?」
「わっ、な…七海くんっ…。」

みょうじさんの焦ったような声が聞こえたけど、とにかく此処から立ち去りたかった。

顔と繋いだ右手がすごく熱い。

アイツら、錫也に言わなきゃいいけど。







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