夏休みが明けてから、哉太は今までより真面目に授業を受けるようになった。月子と熱でもあるのかと配すれば、一発ずつ殴られてしまった。
「あ、そういえば哉太。」
「ん?」
「この間の女の子、バス停で会った。あれ誰?」
「え?なになに女の子?」
「食い付きすぎだって、月子。」
「ああ、みょうじさん?」
「そうそう、あのときもみょうじさんって呼んでたよな。」
「ロースンの店員さん。」
哉太が女の子と喋ってたの?と騒ぐ月子を無視して俺達は移動教室の準備を始める。
「なんでロースンの店員さんと仲良くなってんの?」
「まあ、斯々然々で。」
「なんだそれ。」
あのとき二人が何を話していたのかは聞こえなかったし、よく行くコンビニの店員さんに顔を覚えられるなんて珍しい事でもないのかも。
この時は別に何とも思わなかった。
この時は。
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