帝光中学校に入学してもう2年が経った。1年の時より落ち着いて生活が出来るようになった反面、何だか代わり映えのない日々に少しだけ退屈し始めていた春。
私は彼と知り合う事でいつもとは違う日常を送る事になる。
「そこを退けてくれないか」
「嫌だ。退けたらお前逃げるだろ」
「当たり前だろ。君、どんな顔で追い掛けてきてるかわかってる?」
「見てねーからわかんねぇ」
「だよね。聞いた私が馬鹿だった」
クラス替えをして漸く馴染めてきた頃、事件は突如として起きた。目の前で私の行く手を見事に塞ぐ黒い彼。
丁度3日くらい前からこうして私の前に現れては押し問答をしている。
「お前達またやってるのか」
「緑間…哀れむような目で私を見ないで」
「おい緑間!お前もコイツ連れてくの手伝えよ」
「何で俺がそんな事をしなければならないのだよ。そんなに連れて行きたいなら担げばいいだろう」
「「…………」」
多分、青峰と私の思った事は一緒だろう。担ぐって普通人には使わない単語だと思うんですよね。
それに余計な知恵を彼に与えないで欲しい。本当に担がれたらどうしてくれるんだ、なんて思ってたら急に視界が揺らいで私は今床を見ている。
「…青峰」
「うっし、んじゃ行くか〜」
「なっ、降ろせ馬鹿野郎!注目!注目浴びてるから!」
「暴れんな!落とすぞ」
「落とされた方がマシだ!緑間!」
「まあ、精々頑張るのだよ」
眼鏡のブリッジを指でクイッとやる緑間に殺意が芽生えたのは内緒だ。人事みたいに言いやがって、誰のせいでこうなったと思ってるんだ。
これ完全体育館に向かってるし。絶対女子たくさん居るよなぁ…。ああ、私の平穏な日々よ、サヨウナラ。