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金曜日の授業は週末なせいかいつもより怠く感じるのは全国共通だろう。僕もその1人で数学のノートに落書きなんかして時間が過ぎるのをただ待った。

神苑先輩は今頃何をしてるだろう。夜久先輩達と登校してないって事はきっと今日も休んで仕事をしてるんだろうけど、あんなに休んで出席日数とか大丈夫なのかな?



「梓!」
「…何、翼」
「素足隊長が理事長室に来いって言ってたぞ?」
「素足隊長?…あぁ、星月先生の事か。わかったよ」



いつの間にか授業が終わっていて珍しくサボっていた翼が僕の所に伝言を伝えに来た。それにしても、理事長に呼ばれるなんて僕何かやらかしたっけ?

5階にある理事長室に着くと中から星月先生の声が聞こえた。内容はよくわからないけどきっと何か重要な事だろう。声音がそんな感じだった。



「失礼します」
「木ノ瀬か。悪いな、呼び出して」
「いえ。で、何か僕に用ですか?」
「今から俺と病院に行ってもらいたいんだ」
「…病院、ですか?」
「ああ。理由は行けばわかるよ…」



星月先生は何で病院に行かなければならないのかは教えてくれなかった。僕の家族か親戚でも入院したのか?でもそうだったとしたらすぐに教えてくれる筈だ。

一旦教室に戻って翼に事情を伝えてから荷物を持って正門に向かう。既に星月先生が車を回していて僕はそれに乗り込んだ。病院に向かう途中嫌な予感が一瞬頭を過ぎったけど、それはすぐに現実のものとなった。



「…神苑、せんぱい…?」
「天井から落ちきたライトが神苑に直撃したんだ。頭に強い衝撃があったみたいで未だに意識は戻らない」



ベッドに横たわる神苑先輩。横に置かれた機械、頭や腕に巻かれた包帯、酸素マスク、点滴、それらが僕を現実から引き離していく。

眠っているのは誰だ?僕の知ってる先輩はこんな痛々しい姿じゃない。



「なんで、こんな…」
「佐野を庇ったんだ。おそらく星詠みで見たんだろう」
「星詠み…ですか」



今まで普通に話したりしてきたけど先輩は星詠み科なんだ。星詠みしない訳がない。生徒会長みたいに夜久先輩を守ったり大々的に行動する様な人じゃないから、その事をすっかり忘れていた。



「佐野さんは?」
「俺の家に居るよ。今回ばっかりはあいつも精神的にきたみたいだな」
「そうですか…」



それから暫く神苑先輩の側に座っていたけど、結局先輩が目を覚ます事はなかった。点滴を換えにきた看護婦さんには声をかけ続けていればきっと目を覚ましてくれる≠ニ言われたけど、所詮は気休めの言葉だろう。

面会時間も終わりに近づいた頃、最後に1日でも早く回復してくれるようにと手を握ってから病室を後にした。








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