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中学生の頃にスカウトされて始めたモデル。それを境にママとパパの仲はどんどん悪くなっていった。原因は僕が稼いだお金の取り合い。
他の家庭とは違って家は裕福じゃないし、正直言って学校に通うのすら危うい状態だった。不況の中リストラにあってしまったパパは日に日に荒れていくし、家計を1人で支えていたママも人が変わった様に冷たくなった。
『あの子のお金は私が管理するわ!』
『そんな事言って、お前が使うんだろう!そんな奴に管理なんかさせられるか!』
『っ、貴方だってそう言っておきながら自分が使うんでしょう?!』
毎日毎日、こんな会話しかしていない両親を見て心がどんどん沈みかけていく。どんなに辛い状況でも仲良く幸せに暮らしてきたのに、僕がモデルなんか始めたから家族と言う大切な絆の歯車は狂っていった。
仕事が軌道に乗り始めた頃、両親はとうとう離婚した。最後の最後まで言い争いをして。数ヶ月も裁判をやって結果的に僕はママの方についていく事になった。
『これからは仕事に専念してね!ママも咏羽のサポート頑張るから』
それからママと2人で頑張ってきた。でもある日突然夢で見た事が頻繁に現実で起こる様になって、ママにそれを話したら気味悪がられてまた関係がぎくしゃくし始めた。
これが星詠み≠ニ呼ばれるものだと知ったのは1年後の事で既にママは僕を避けていた。これ以上一緒に居たらダメだと本能的に悟り、事務所に無理を言って力をコントロールできる様にと星月学園に入学した。
「…咏羽?もう着いたよ」
「あ、うん。今行く」
ここに来て星詠みの力も制御できる様になったし、友達もたくさんできて幸せな高校生活を送れてる。
これでママとの仲も元に戻ればって何度も思ったけど、勝手に進路を決めて勝手に家を出てきた僕は2年経った今も家に帰れずにいた。
「ねぇ、誉」
「何?」
「ママは……ママは今でも僕を受け入れてくれるのかな」
「咏羽なら大丈夫。一緒に居たいって気持ちがあれば、きっとお母さんも咏羽の事ちゃんと見てくれるよ」
誉の言う事を素直に受け取れないでいると、一樹が無言で頭を撫でてきた。本当にこの2人はお兄ちゃんみたいだな。
「仕事が一段落したら、会いに行くよ。それがいつになるかわかんないけど…」
「気持ちの整理ができてちゃんと話せるなら行ったらいいさ。俺と誉はお前を応援するし、な?」
「うん」
「…ありがとう。一樹、誉」
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