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とある昼休みに星月先生に呼ばれて保健室へと向かった。何だか嫌な予感がしたけど呼ばれたからには行かない訳にはいかなくて、保健室の扉を開けてそこにいたのはまさかの水嶋先生。



「咏羽ちゃん、久しぶりだね」
「…帰ります」
「あー、待て待て。郁を見て帰ろうとするな」
「星月先生!何で毎回この人居るんですか?!」
「勝手に来るんだ仕方ないだろう」



この間の件で完全に苦手な人となった水嶋先生。もうこの人を見ると苛々というか何というか何とも言えない感情に苛まれる。



「僕も随分と嫌われたものだね」
「自分が悪いんじゃないですか」
「神苑、郁はいいからちょっとこっちに来てくれ」
「うわ、琥太に…星月先生まで酷いな」



別にわざわざ呼び直さなくてもいいのに。そう思いながら星月先生の机に寄ると何故か先日発売されたばかりのPyxisが広げられていた。それも僕が掲載されているページ。



「これがどうかしました?」
「どうかしましたって…この男のモデル、木ノ瀬だろう」
「咏羽ちゃん随分大胆な事してるね。本当に高校生?」
「水嶋先生は黙っててください。確かにそれは木ノ瀬くんですよ」



佐野さんの無茶振りに頭を悩ませながらも撮った1枚が2ページに渡って大々的に載せられている。言わずもがな、表紙も僕と木ノ瀬くんの2ショットだ。

きっと星月先生は現場で会って問題は無かったのか聞きたいんだろう。この人は心配性だから。



「心配しないでください。バレるバレないの前に、木ノ瀬くんは佐野さんの甥っ子なので問題はないですよ」
「木ノ瀬が佐野の甥?初めて聞いたぞ」
「佐野さん、言いませんでした?」
「ねぇ、僕そっちのけで話しを進めないでよ」



星月先生と佐野さんは知り合いらしくよく僕の事で連絡をとったりするらしい。水嶋先生は佐野さんを知らないし当然この会話には入ってこれない。ちょっとだけいい気味だなんて思ったけど、放置したら後が怖いし説明してあげよう。



「ここに掲載されているのは先週木ノ瀬くんと撮った写真で、それを撮ったのは僕の専属カメラマンの佐野和成って人なんです」
「その佐野って人の甥が木ノ瀬くんだって?」
「そうです。甥を見学させたいって連れてきたのが木ノ瀬くんだったんですよ」
「佐野の甥が木ノ瀬なのはわかったが、何であいつまで載ってるんだ」



どうやら星月先生の疑問はこの説明だけじゃ解消されないらしい。撮る筈だった男モデルが来れなくなって急遽木ノ瀬くんに代役を頼んだと言えば、星月先生も水嶋先生も漸く納得してくれた。



「さて、俺の用は済んだしもう行っていいぞ」
「じゃあ、失礼します」
「僕もそろそろ行こうかな。陽日先生に怒られる前に戻らないと」
「何で同じタイミングで行こうとするんですか…!」
「仕方ないじゃない、不可抗力だよ」
「はぁ?もう意味わかんない…」



結局口喧嘩をしながら保健室を後にした僕と水嶋先生。クラスに帰れば久保が、保健室に行けば水嶋先生。僕の周りには執拗に構ってくる人しか居ないんだろうか。








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