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「咏羽!」
「あ、月子。久しぶり」
「咏羽じゃないか。もう学校に来て大丈夫なの?」
「羊も久しぶりだね。心配かけてごめんね、もう大丈夫だから」



忙しかった撮影を終えて帰ってきたのは昨日で正直言ってまだ疲れはとれてない。月子と羊は身内に不幸があったって事を信じてるから突っ込んだ事は聞いてこないけど、隣にいる錫也と哉太は僕に何か言いたげだ。



「月子、羊。ちょっとここの2人借りていくけどいいかな?」
「え、別にいいけど…どうかしたの?」
「咏羽が2人を連れてくなんて珍しいね」
「ううん、たいした事じゃないから気にしないで」



月子と羊に断りを入れて錫也と哉太を連れて屋上庭園に行く。勝手に黙っておいてなんて頼んで何の説明もないんだ、納得なんて錫也はできたとしても哉太は無理だろう。



「さて、聞きたい事山ほどあるだろうけど何から聞きたい?」
「…咏羽は、本当にモデルやってるのか?」
「やってるよ。雑誌とかで見た事あるでしょ?怜音は私≠ネの」
「何でそれ黙ってんだよ。月子にも羊にも言ってないんだろ?」
「言えない理由は、哉太達が考えてる物より遥かに難しいんだよ」



モデルを始めたのは中学の頃。少しだけ星詠みの力がある事がわかり星月学園に入学するにあたって事務所から出された条件。それを破れば即退学。

これらをかい摘まんで話せば、錫也は困った様な顔をして哉太は口を開けたまま動かなかった。



「これが言えなかった理由。まぁ、もう3人にバレちゃってるし意味ないけど」
「もしかして、最近木ノ瀬くんと仲が良かったのって…」
「そう。木ノ瀬くんにもバレてるの」
「はあ?!お前何して…」
「不可抗力だったの。事務所と電話してる最中だったから」



哉太はどうも納得がいかないらしくずっと眉間に皺を寄せるばかり。でも錫也は哉太とは対照的に晴れやかな顔をしていた。



「何はともあれ、話してくれて良かったよ」
「錫也…」
「正直2年も一緒にいて今更隠し事が発覚するなんて、ちょっと傷ついたから」
「…ごめん」
「俺や錫也はもういいけどよ、月子と羊には言わないのか?」



この2人に話して月子と羊に言わない訳にはいかない。でもタイミングとかこれ以上自分がモデルをやってる事を曝してしまっていいのか、自分の中で葛藤があるから今はまだ話せそうにない。

そう言えば錫也は咏羽の言いたい時に言えばいい≠ニ、頭をくしゃりとしてきた。哉太も同じ気持ちらしく額を小突いてくる。



「2人共、ありがとう」
「「どういたしまして」」



僕はこの瞬間、2人に話せて良かったと心から思えた。近いうち月子や羊にも言える日がくるといいな。








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