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僕が最も苦手とする水嶋先生はあのあと星月先生が呼んでる≠ニ言い、急に腕を掴んで保健室へと強制連行された。

もちろん僕は反抗した。したのにも関わらずだ、この人は愉快そうにズルズルと僕を引きずって行く。



「ちょ…っと!女の子を引きずるとかどうゆう神経してるんですか!」
「あぁ、ごめんごめん。咏羽ちゃんの反応が面白いから、つい」
「ついで引きずらないでくださいよ」



保健室を目前にしてようやく解放された僕は、また何かされないうちに距離をとった。この人は手が早いから何をするかまったくわからない。



「琥太に…星月先生、連れて来ましたよ」
「郁か、すまないな」
「星月先生、次から呼ぶ時は水嶋先生じゃない人に頼んでください」
「何だ、何かされたのか?」
「人聞きの悪い事言わないでよ。ちょっと遊んであげただけじゃない」



遊んであげたって…アンタは人を引きずる事を遊ぶと言うのか!



「とにかく、水嶋先生とは今後一切関わりたくありません」
「うわ、冷たいな〜」
「郁、お前こいつに何したんだ?」「それより星月先生、用件は何ですか?」



1分1秒でも早く水嶋先生から離れたい僕は、用件をさっさと聞いてこの場を去りたくて仕方なかった。

でもそんな時に限って怪我した人が来たり、理事長を兼任している星月先生に来客があったりとなかなか本題に入れない。



「早く帰れなくて残念だね、咏羽ちゃん」
「残念どころの話しじゃないです」
「僕の事、そんなに嫌い?」
「嫌いと言うか苦手です。何考えてるかわからないし、タラシだし」



水嶋先生の噂というか、よく聞く話しは大抵あまりいいものじゃない。女の人と沢山関係を持ってるとか、女性関係ばかりだから。



「ふーん…まぁ、間違いではないけど」
「認めるんですね。そうゆう人って最低だと思いますよ」
「誰に何を言われようと構わないけど、周りの人間を騙してる君には言われたくないな」
「…何の事ですか」



水嶋先生のカンに障ったんだろうか。少し不機嫌な表情をしながら僕との距離をじわじわと詰めてくる。

扉と反対側に居る僕は逃げ道を完全に失った。こんな時に限って星月先生はまだ戻って来ないし。



「知らないとでも思った?僕知り合いにカメラマンが居てね、怜音を撮った時の写真を見せてもらった事があるんだ」
「………」
「あれ、咏羽ちゃんでしょ?怜音としてモデルやってるなんて、意外だったよ」



いつものからかう様な口調で話す水嶋先生に違いますと、はっきり言おうとした。でも突然ガタンと音が響いて、水嶋先生の後ろを見て僕はもう終わったと思った。

だって、錫也と哉太が驚いた表情でこっちを見ていたから。








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