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「そういえば、咏羽って最近梓くんと仲良いよね?」
「…え?」
「それは俺も思った。あまり接点が無さそうなのに、何かあったのか?」



ある日の昼休み。哉太と羊が職員室に行ってる間、月子と錫也が作ったお弁当を食していたら急に話題を振られた。確かに木ノ瀬くんに例≠フ事がバレて以来、よく一緒に昼食をとる様になった。

でもそれはあくまで友人としてであって、特別な関係になった訳じゃない。なのに、どうしてこの2人はこんなにも興味津々なのだろう。



「いや、別に、意味は無いんだけど…」
「嘘!」
「嘘って、そんなに僕が木ノ瀬くんと居るのが意外?」
「うん、意外」
「確かに想像はつかないな」



言いたい放題だな、おい。月子が疑問に思うならまだわかるけど何で錫也まで。あんまりそうゆう事には関心が無いと思ってたんだけどな。



「ただ保健室で会って話しが合ったから仲良くなっただけだよ」
「保健室で?」
「そう。月子、この間星月先生に呼ばれたけど行けなくなった時あったでしょ?代わりに行ったら木ノ瀬くんが居たの」
「へぇ〜」



嘘は言ってない。実際月子の代わりに保健室に行く事だってあるし、木ノ瀬くんにだって何度か会ってる。



「ほら、早く食べよう?昼休み終わっちゃうよ」
「そうだな。月子、お前の好きな卵焼きも作ってきたから食べろよ」
「本当?錫也の卵焼きは甘くて好き!」



こうして和気藹々とした空気に包まれた昼下がり。不意に僕は思った。この居心地の良い場所にいつまで居られるのか。今は良いかもしれない、でもいつかは隠す事にも限界はくる。

月子に錫也、哉太に羊も僕の事を大切な友達だと思ってくれてる。一樹や誉達だって、妹みたいだって可愛がってくれてる。



(…いつまで騙せばいいんだろう)



でも、彼等は本当の僕を知らない。言えないから言わないのもあるけど、今更言ってこの関係が崩れるのが怖くて言えないのもある。

誰がどう見たってこれは騙してる≠だ。偽りの僕を知ったら、皆はどう思うかな。



「おっ!ここに居たのか!」
「まったく、哉太のせいで僕お腹ペコペコだよ」
「うるせー、羊!お前だって、」
「はいはい、そこまで。遅かったな、2人共」
「哉太も羊くんも、早く食べなきゃなくなっちゃうよ?」



遅れて来た哉太と羊。やっぱりこの4人には話さなきゃいけないんだよね。こんな僕と仲良くしてくれてるんだから。

思い立ったが吉日。おかずの取り合いで盛り上がる哉太達を見て、一呼吸置いてから話そうとした時。



「咏羽ちゃん」
「…水嶋先生?」



僕の邪魔をしたのは、この学園で1番苦手な教育実習生の水嶋先生だった。








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