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「…神苑、悪いがもう一度言ってくれ」
「だから、木ノ瀬くんにバレました」



次の日の放課後、僕は真っ先に星月先生に報告をした。この人は僕がモデルで事務所が出してきた条件の事を知っている。その上でこうして協力してくれている、普段はやる気がないけど頼りになる人だ。



「あれだけ言ったのに、何でバレたんだ?」
「校舎から離れた場所でマネージャーと電話してたら、運悪く」
「…随分と落ち着いてるな」
「正直聞かれた時は焦りましたけど、事情を知った上で協力してくれるそうなので」



自分専用のマグカップと星月先生のカップにお茶を注ぐ。本当は昨日言いに行けばよかったのに、突然の出来事に頭がついていかなかった僕はそのまま寮に帰ってしまった。

バレた≠ニいう事実がなかなか受け止められなくて、最悪の事態を想定していなかった僕は延々と事務所に報告すべきか悩んだ。



「でも、僕は木ノ瀬くんで良かったと思ってます」
「何故だ?」
「だって、これが木ノ瀬くんじゃなくて面倒な上級生だったらもっと最悪な事になってたから」
「まぁ、それもそうだな。木ノ瀬には俺からも一応言っておくよ」



お前がそんなヘマをするとはな≠チて星月先生は笑った。何だろうこの人、今の状況をえらく楽しんでいるじゃないか。

それが顔に出てしまったのか、星月先生は僕にむくれるなとお茶菓子をくれた。別にむくれてなんてないのに。



「念のために言っておくが、これ以上周りにバレる様な事はするなよ」
「わかってます」
「俺のフォローにも限界がある。せめて信用出来る奴くらいは作ってくれると有り難いんだがな」
「それは無理な話しですねー」



長い事この業界に居ると信用≠ネんて言葉は聞かなくなる。モデルはゴシップネタが一度出ただけで命取りになるから、プライベートな話しはしない。

そうなると必然的に友達も減っていくだけで、増える事はない。ただ、僕が周りを信用していないだけだけど。



「じゃ、話しは済んだし帰ります」
「あぁ。気をつけて帰れよ」



マグカップに残っていたお茶を飲み干して、洗い場で軽く濯いでから僕は保健室を後にした。あ、せっかくお茶菓子貰ったのに机に置きっぱなしにしてきちゃった。

お菓子如きでまた戻るのは面倒なので、今度取りに来る事にしてそのまま寮に帰る事にした。








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