09




体育祭が終わった次の日、クラスの大半の人が筋肉痛で動きがぎこちなくなっていた。星詠み科には運動部に所属してる人が殆ど居ないから、まぁ、当たり前の結果かな。



「神苑、陽日先生がお前の事探してたぞ?」
「陽日先生が?……ろくな事じゃない気がするから今日は逃げるよ」
「ま、見つかんねーように頑張れ」



陽日先生から逃げるなんて簡単だ。ただあの人が思いつかない様な所に隠れてればいいだけ。偶に一樹とか誉に見つかっちゃうけど、それ以外の人に見つかった事はないから大丈夫。



「今日はどこに隠れようかな…」
「何、お前かくれんぼでもやんの?」
「…哉太」
「んな嫌そうな顔すんなよ!ったく、人がせっかく声掛けてやったのに…」
「そんな事頼んだ覚え、僕ないんだけどな」



そう言えば哉太が怒って僕の頭を小突いた。月子にはそんな事しない癖に、僕には普通にやるんだから困ったモンだ。



「で?」
「で…?」
「かくれんぼでもやんのかって聞いてんだよ!」
「あー、はいはい。違うよ、かくれんぼじゃなくて鬼ごっこ」
「は?鬼ごっこって…お前何歳だよ」



哉太があからさまに馬鹿にしてくるモンだから、わざと踵で思い切り足を踏んでやった。てか、そろそろ行かなきゃ隠れる前に陽日先生に見つかっちゃうな。



「じゃあね、哉太。次馬鹿にしたら容赦しないから」
「てめ…っ!最初っから容赦ねーだろッ!」



痛がる哉太をその場に置き去り、校舎とは反対側に向かう。途中外で授業をサボっていたらしい一樹が居て、見つかったら陽日先生並に面倒になるからそこは避けて通る。



「ここら辺まで来れば見つからないかな……って、電話?」



人気の無い校舎から大分離れた所に身を隠す。スカートが汚れるのは嫌なのでハンカチを敷いてその上に座ると、丁度スマホのバイブ音が聞こえてきた。



「事務所からか……もしもし」
『あ、怜音ちゃん?今大丈夫かな?』
「はい、大丈夫です」
『明日の撮影なんだけど、佐野さんが来れなくなって急遽変更になっちゃったんだ』
「え、佐野さん来れないんですか?」



佐野さんは僕がモデルを始めた頃からずっと撮ってくれているカメラマン。他の人より断然撮影しやすいし、気を遣わなくて済むから僕にとっては最高のパートナーと言っても過言じゃない。



『明後日なら大丈夫だって言ってたけど、怜音ちゃんどうする?』
「…私これでもプロのモデルですから、違う方でも大丈夫です」
『そっか。じゃあ、明日2時に撮影現場にね』
「はい」



大丈夫って言っても、佐野さん以外のカメラマンと撮影した事なんて数回くらいしかないから、正直不安。でもプロのモデルなんだから相手を選ばずちゃんと熟さなきゃ。



「…大丈夫、かな」
「神苑先輩…?」
「っ…?!」



誰も居ないと思って完全に油断していた。今日は殆どの科が午前で授業が終わるし、今思えば近くに弓道場もある。さっきの会話、聞かれてしまっただろうか。








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